宮子の怒り

夫は暗くなることを見越して懐中電灯を取って、追ってきてくれたらしい。そして夏子たちはそのまま下山。そうして無事に家にたどり着くことができた。

帰ってきた子供たちを見て、大人たちは狂喜乱舞。

全員が子供たちを抱き寄せていた。その光景は見ていて心が温まるものだった。

そこで宮子が莉奈を引いて近づいて来た。目には大粒の涙が見える。

「お義姉(ねえ)さん、ほ、本当にありがとう……!」

「ああ、いえ、いいんですよ……」

さらにハツも近づいてくる。

「ほら、警察なんて呼ぶ必要なかったじゃないか」

ハツとしては精いっぱいの強がりだったのだろう。しかしそれは地雷だった。

「ふざけないで! お義姉(ねえ)さんがこれだけやってくれたから見つかっただけよ! 警察に通報していたら、お義姉(ねえ)さんまでこんな危ない目に遭わなくて良かったのよ!」

ハツに激怒する宮子に夏子は驚いた。

「そうだ。だいたい母さんは世間体ばかりを気にして、全然俺たちのことを考えてくれてないだろ! 子供のことだって、全然心配してなかったしな! そんなヤツが子供を産めだなんて二度と言うな! 少なくとも子供のことはアンタよりも夏子さんのほうがしっかり考えているよ!」

義兄が先日とは正反対の意見をハツにぶつけている。

あまりにきれいな手のひら返しに夏子は思わず笑いそうになる。

それからハツは親族たちにこっぴどくしかられ、それから夏子が帰るまでの間、ずっとおとなしくなっていた。

夏子としてはそれくらいが良い環境なので、何も援護したりしなかった。

それから夏子は初めてと言っていいほど、過ごしやすい夜を送る。

莉奈や子供たちはあれから懐(なつ)いてくれて、ずっと一緒に遊んでいた。宮子たちもそんな夏子を温かい目で見てくれていた。

そして2日になり、夏子たちは実家を後にする。そのときも多くの親族たちが見送ってくれた。

車を出してしばらくした頃、夏子はぽつりとつぶやいた。

「……子供って、いいもんだね」

「子供のこと、後悔してる?」

「ううん。だって今、とっても幸せだから」

夫がいるからというのは、気恥ずかしくて言葉にできなかった。

徹は笑顔でうなずいた。

「俺も同じだよ。だって、夏子がいるからね」

夫の言葉に夏子は思わず視線を窓の外に向ける。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。