役員と公務員は要注意 勤続5年以下は2分の1課税の例外
退職所得の計算上、額を半分に減じる2分の1課税は税負担の低下に貢献する。しかし勤続年数が5年以下の場合、2分の1課税が適用されない場合がある。退職金が「特定役員退職手当等」または「短期退職手当等」に該当するケースだ。
特定役員退職手当等とは
特定役員退職手当等とは、勤続年数が5年以下の「役員等」に該当する人が、その対価として受け取る退職金のことを指す。特定役員退職手当等には2分の1課税が適用されないため税金が高くなりやすい。
【役員等の2分の1課税の適用】
・勤続5年以下:なし
・勤続5年超:あり
役員等には取締役といった会社役員が想起される。しかし該当するのは会社役員だけではない。対象には公務員も含まれるため注意が必要だ。
【特定役員退職手当等における役員等に該当する人】
・会社役員(※)
・国会議員、地方公共団体の議会の議員
・国家公務員、地方公務員
※法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事および清算人ならびにこれら以外の者で法人の経営に従事している一定の者
短期退職手当等とは
勤続5年以下の例外は役員等以外にも及ぶ。会社従業員など、役員等に該当しない場合も勤続年数が5年以下なら2分の1課税は制限される。これを短期退職手当等と呼ぶ。
短期退職手当等では、退職金から退職所得控除を差し引いた残額のうち300万円以下の部分は2分の1課税の適用を受けられない。
例えば勤続年数4年なら退職所得控除額は160万円だ。したがって退職金のうち460万円以下の部分は2分の1課税が適用され、460万円を超える部分は適用がない。
【役員等以外(会社従業員など)の2分の1課税の適用】
勤続5年以下 | 勤続5年超 | |
300万円(※)以下の部分 | あり | あり |
300万円(※)超の部分 | ― | あり |
※退職金(額面)-退職所得控除額の残額
出所:国税庁 勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(短期退職手当等)
2分の1課税の適用がない場合、単純に税負担は2倍になる。特に任期のある会社役員は勤続年数が短くなりやすく、また退職金も高額になる傾向にある。注意した方がよいだろう。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)