鬼門だった海外 イタリア子会社の不振で再び最終赤字

リクシルの受難は続きます。2011年に取得したイタリアのペルマスティリーザ社が振るわず、2017年に中国企業への売却を決定しました。しかし外国資本によるアメリカへの投資を規制する対米外国投資委員会(CIFIUS)が承認せず、売却は頓挫します。ペルマスティリーザは売り上げの多くをアメリカが占めていました。

リクシルはペルマスティリーザを非継続事業として連結に反映していませんでした。しかし売却が困難となったことから再び損益の認識を迫られます。2018年度に521億円の純損失となり、3期ぶりの最終赤字に陥りました。

ペルマスティリーザは2020年にアメリカの投資会社へ売却されます。不振事業の整理で利益は回復に向かいました。しかし2022年度は重点地域のアメリカで金利上昇に伴う需要の減退が見られたほか、同じく注力する中国市場では市況が低迷し、再び大幅な減益となります。

【リクシルグループの純利益(2015年度~2022年度)】

海外の苦戦は株価にも反映されているようです。リクシル株式はペルマスティリーザ売却の見通しが立った2020年から2021年にかけて上昇トレンドに入りました。しかし米金利が上昇を開始した2022年以降は顕著に下落しています。

【リクシルグループの株価(月足、2018年12月~2023年12月)】

出所:Investing.comより著者作成

住生活産業のグローバルリーダーを目指して強化した海外事業は、利益面ではまだ課題が残ります。とはいえ国内の住宅市場は縮小傾向にあり、少子高齢化から拡大にも期待しづらい状況です。苦戦が続きますが、成長のためには海外に注力せざるを得ないのかもしれません。

【国内の新設住宅着工件数(2016年度~2022年度)】

リクシルの海外事業は実を結ぶのでしょうか。投資家の注目が集まります。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)