国内広告代理店で圧倒的なシェアを持つ電通グループは、実は収益の過半を海外で稼ぐグローバル企業です。売上総利益に占める海外事業の構成比は60%に達しています(2022年12月期。出所:電通グループ 決算短信)。

電通のグローバル化が加速したのはイージス・グループ(現・電通インターナショナル)の買収がきっかけでした。巨額の買収費用を懸念する声もありましたが、現在では海外事業の中核を担っています。

ただし電通のグローバル化は順風満帆というわけではありませんでした。海外事業の不振から過去最大の赤字を計上したこともあります。

電通がイージスを買収した経緯と、現在も爪痕が残る海外事業の失敗を振り返ってみましょう。

イギリス広告大手イージスを4000億円で買収

電通がイージスの買収を発表したのは2012年7月のことです。イージスはイギリスの広告代理店大手で、当時はロンドン取引所にも上場する大企業でした。

買収の決め手は事業の重複が小さかったことだとみられています。電通は日本や北米、アジア圏などで事業を展開していた一方、イージスは欧米のほか東欧や中東、アフリカといった新興国で拠点を持っていました。またメディアに強い電通に対し、イージスはデジタル領域で先行していました。シナジー効果を見込んだ電通はイージスの買収を決定します。

買収はイージス株式100%を4000億円で取得し完全子会社とするものでした。これは電通の過去最大のM&Aとみられています。巨額な負担が嫌気され、株式市場では売られる場面もありました。

【当時の電通グループの株価(日足終値、2012年)】

出所:Investing.comより著者作成