広告代理店からコンサル会社へ 電通の構造改革とは
経営不振を受け、電通は2021年2月に中期経営計画(2021年年度~2024年度)を発表しました。そこで明かされたのはCT&T(カスタマートランスフォーメーション&テクノロジー)領域への注力です(出所:電通グループ総合レポート2022年 中期経営計画)。
電通がCT&Tと呼ぶ領域は、消費者の行動をデジタル技術によって把握し、顧客体験の向上を目指すための企業の変革を指します。電通は従来の広告やマーケティングの支援にとどまらず、システムインテグレーションやデータ分析といった幅広いサービスを提供し、顧客企業のCT&Tを促すコンサルティング企業へと変化を目指しています。
カスタマートランスフォーメーション&テクノロジーとは、企業が、彼らの顧客や生活者を起点とした事業戦略を展開する際に必要となるデータマネジメント、デジタル・エクスペリエンス、テクノロジープラットフォーム、組織的なインフラなどを含む事業基盤の変革です。
電通はCT&T領域は当面1ケタ後半から2ケタ%の成長が続くと見込んでいます。売上総利益構成比は2023年9月に33%に達し、計画ではこれを50%にまで引き上げるとしました。
【CT&T事業の売上総利益構成比】
電通は、広告代理店業におけるテクノロジー企業やコンサルティング企業といった異業種との競争をリスクの一つとして認識していました。CT&T領域の拡大は、競合との差別化を図る狙いもあります。つまりマーケティングとテクノロジーおよびコンサルティングの融合サービスをグローバルで提供できる数少ない企業への進化を目指しているのです。
当面は費用が先行し利益を圧迫する展開が続くでしょう。しかし構造改革に成功すれば優位な立場を築けるかもしれません。国内広告代理店トップ企業の挑戦が続きます。
【電通グループの業績】
売上高 | 純利益 | |
2021年12月期 | 1兆0856億円 | 1084億円 |
2022年12月期 | 1兆2439億円 | 598億円 |
2023年12月期(予想) | 1兆2607億円 | 333億円 |
※2023年12月期(予想)は同第3四半期時点の同社の予想
出所:電通グループ 決算短信
【電通グループの株価(月足、2020年10月~2023年10月)】
文/若山卓也(わかやまFPサービス)