ニデック(旧・日本電産)株式の下落が止まりません。2022年から売られるようになり、2023年10月には5401円の安値を付けました。2021年高値(1万5175円)からの下落率は64%に達しています。

【ニデックの株価(月足、2020年11月~2023年11月)】

出所:Investing.comより著者作成

背景には業績の低迷があります。創業期に成長をけん引した精密小型モータは停滞傾向にあり、次の成長領域に見据えた車載向け製品でも中国市場の価格競争などから苦戦しています。

一筋の光明は家電・商業・産業用です。ニデックが得意とする小型モータより比較的大きく幅広い分野で用いられる製品で、直近では最大の収益源となっています。ニデックは米エマソン・エレクトリックなどからのM&Aを通じこれらの製品群を強化してきました。

ニデックがエマソンから事業を取得した経緯を振り返りましょう。

エマソン社から事業譲受 精密小型モータ以外を補完

ニデックがエマソンから初めて事業を取得したのは2010年のことです。エマソンは多数の事業を手掛けるコングロマリットで、うちモータ&コントロール事業(家電・産業用モータ)を譲り受けました。

当時ニデックは2015年度までの中期経営目標「Vision 2015」の推進中で、手薄だった一般モータ(車載用モータおよび家電・商業・産業用モータ)の売上高を引き上げる狙いがありました。

さらに2017年には再びエマソンからモータ・ドライブ事業と発電機事業を買収します。これにより海外で弱かった低圧のモータや発電機も製品ラインに加わり、ニデックの一般モータ事業は大きく強化されました(参考:ニデック Emerson モータ・ドライブ、発電機事業買収に関する参考資料)。

【エマソン社からのM&A】
2010年:モータ&コントロール事業(現・ニデックモータ(米)など)
2017年:モータ&ドライブ事業、発電機事業(現・ニデックルロア・ソマー(仏)など)
2017年:ドライブ事業(現・ニデックコントロール・テクニクス(英)など)

出所:ニデック M&Aの歴史