最大の要因は「米国の金融緩和」の影響か
米国が政策金利であるFFレートの引き上げを始めたのが、2022年3月からのことです。それまでは、FFレートの下限と上限を0.00~0.25%にしていましたが、2022年3月に0.25~0.50%に引き上げ、2023年7月には5.25~5.50%にしました。この金融引き締めとほぼ軌を一にして、NFTアートの価格暴落が生じています。
これはいつの時代も同じですが、大幅に金融が緩和されると、バブル的な状況が生じます。1989年にかけての日本の不動産バブルがそうでしたし、2007~2008年にかけての米国における不動産価格の高騰も同じです。
なぜ不動産価格が高騰したのかというと、金融緩和によって金余りの状態になるからです。
金融緩和とは、世の中全体に流通しているお金の総量を増やすことです。そのうえ、世の中にあるお金は、常に運用先を求めて動いています。株式市場や債券市場、短期金融市場、などの金融市場で運用し切れなくなったお金は、不動産市場のような非金融の資産クラスへと流れていきます。
そして、それでもまだお金が余っていると、骨董品や時計、美術品などに流れていき、これらの価格が高騰します。NFTアートは、まさにその典型例と言っても良いでしょう。
さらに言うと、時計も金融緩和の影響を受けてバブル的な値動きをしました。ここ数年、「ロレックスのスポーツウォッチを見つけたら、とにかく買った方がいい。どれだけ高くても、それ以上の値段で売れるから」と、よく言われたものです。
高級時計の二次価格動向を示す指標に、Watch Charts Overall Market Indexがあります。これは、上位10の高級時計ブランドから60点の時計を分類し、作成されているインデックスです。
その値動きを見ると、2021年1月には2万6975ドル程度だった価格が、2022年3月には4万6967ドル程度にまで上昇しました。まさに米国が金融緩和をしている最中、余ったお金が時計市場に流れ込み、価格が高騰したのです。
しかし、そこから米国の金融引き締めが本格化するなかで、同インデックスは急落していきました。2023年12月時点のそれは、2万9598ドルまで値下がりしています。
NFTアートの価格高騰については、希少性が評価されたからなどとも言われていましたが、最大の要因は、米国の大幅な金融緩和によって、行き場を失った大量のお金が投機的に、NFTアートに流れ込んだからと見るのが妥当でしょう。