“投機的”な値動きになりやすい対象物の特性

NFTアートが投機的な値動きになった原因は、米国の金融緩和以外にもう1つあります。それは、対象物そのものの特性です。

たとえば株式は、企業活動によって生み出される経済的な付加価値を、配当金として得ることができます。債券もしかりです。しかし、NFTアートは、それそのものから新しい経済的な付加価値が生み出されることはありません。単なるイラストや絵画、音楽に過ぎません。

さらに言えば、時計も同じです。金やプラチナなどの貴金属、原油、暗号資産、外国為替もそうで、いずれもそれそのものから配当金や分配金、利息が発生されることはありません。デジタル、リアルの違いはありますが、いずれも「モノ」なのです。石ころから利息が生まれないのと同様、モノは何の経済的付加価値も生み出しません。

この手の資産は、往々にして投機的な値動きになりがちなのです。株価や債券価格は、価格の妥当性を合理的に説明できますが、こうしたモノの値段を、少なくとも投資の観点から合理的に説明することはできません。

価格の妥当性を合理的に説明できないと、今の価格が割高なのか、それとも割安なのかということも分からなくなります。結果、買うから上がる、上がるから買う、という投機的な動きになってしまうのです。

NFTアートや時計のバブルが崩壊して価格が急落しても、経済活動には何ら支障をきたさないでしょう。とはいえ、この手のバブルが崩壊し、再び高値を抜くところまで回復するには、ものすごく長い時間が必要となります。個人の資産形成に、この手の投機は全く持って不向きであるという点は、理解しておいた方が良いでしょう。

参考
・外為どっとコム「米国政策金利の推移」
・プレジデントオンライン「3億円超だった『世界初のつぶやき』は21万円に大暴落…『NFTバブル』を煽りまくったエセ富裕層の末路」