次男が提案した現実的な策

「兄ちゃん、このおばさんに何言っても無理。マジ留学したいなら現実的な手段を考えないと」

「どうすんだよ?」

「じいちゃんに立て替えてもらう。それっきゃないでしょ? 兄ちゃんは自慢の孫だから、喜んで出してくれると思うよ。そもそも原因作ったの、このおばさんだしさ」

蒼空は時折こうした老獪さを見せる。学校の成績は拓海ほどではないけれど、非常に冷静で現実的な判断をする。義父は初孫の拓海を目に入れても痛くないほどかわいがっているが、「あいつは肝が据わっている」と評価するのはむしろ蒼空の方だ。


 

留学資金の支払期限が迫っていることもあり、その日のうちに隣の義父宅を訪れることになった。瑞希が「絶対に行きたくない」と言い張ったため、拓海と一緒に重い腰を上げた。

義父には、拓海から経緯を説明させた。幸い、事態を把握した義父はすぐに2000万円を用意すると約束してくれた。

そして、「瑞希もいい年して何をやってるんだか」と吐き捨てた後、いきなり俺に向かって説教をたれ始めた。

 

「確かにこの件は瑞希が悪いが、お前の監督不行き届きでもあるぞ。毎晩、会社の金で清水と飲み歩いていて、寂しい思いをさせていたんじゃないか」

「だいたい、お前はマネジメントの意識が低過ぎる。もう一度ヒラからやり直すか?」

「例の2720号室の住人はどうなった? ちゃんと調べたのか?」

やれやれ、瑞希のせいでとんだ災難だ。

 

その時、胸ポケットでスマホが震えた。応答した途端、清水の大声が響く。

「専務、大変っす。2720号室の河合が警察に連行されました。マルチ商法で、特定商取引法違反の容疑がかかってるそうです」

義父の目がギロリと光る。詰んだ、と思った。

※この連載はフィクションです。実在の人物や団体とは関係ありません。