<前編のあらすじ>
宮下しのぶさん(仮名)は48歳の既婚女性。明るく周囲からも信頼される人柄の宮下さんですが、実はご実家には高齢でひきこもりの兄がいる「8050問題」を抱えていました。母親の認知症発覚をきっかけに兄が電話をかけてきて、本格的にトラブルに巻き込まれてしまいます。
●前編:【引きこもり歴25年・50代男性が「家族の緊急事態」に直面…妹に提案した身勝手な計画】
絶縁状態の兄から提案された耳を疑う計画
新潟県内にある実家とは、もともと疎遠でした。特に4年前に父親が亡くなりその後コロナ禍になって以降は、帰省はおろか、電話1本していません。ひきこもりの兄、そして子供の頃から兄ばかりえこひいきしてきた母との接触を避けたかったからです。
実家の方からも、父の一周忌や三回忌の連絡もありませんでした。その都度私はこっそり帰省して、父のお墓で「お父さん、きちんと供養ができなくてごめんなさい」と手を合わせていました。
兄はというと、引きこもってからもう25年になります。勉強も運動もできて地元の中学で目立つ存在だった兄は推薦で有名私立高校に入学しますが、そこで挫折し非行に走りました。そして4浪の末入ったFランク大学を何とか卒業し、父のコネで地元の建設会社に就職したものの、周囲とうまくいかず大口の取引先とトラブルを起こして退社。以降はずっと自室に引きこもったままです。
ですから1年ほど前、兄からいきなり電話を受けた時は驚きました。母がアルツハイマー型認知症に罹患(りかん)して施設療養が必要になったので、すぐに帰省して施設入居の手続きと家のこと、つまり自分の世話をしてほしいとあまりに自分勝手な計画を語ったのです。