問題点②:ファンドの選択や運用成績は担当者次第

さて、ここまではファンドラップについてよく言われている問題点なのですが、もう1つ大きな問題があることを、筆者もつい最近知りました。

証券会社が提供しているファンドラップで、2000万円程度を運用している知人の話がきっかけです。たまたま、ポートフォリオの中身を見せてもらう機会がありました。ざっと8本程度のアクティブ型投資信託で、ポートフォリオを構築していました。

ファンドラップでポートフォリオを構築する際には、まず顧客がどういう運用の意向を持っているのかを金融機関の担当者がヒアリングし、リスク許容度を診断します。そのうえで投資提案書が作成され、それが顧客に提示されます。顧客はその投資提案書で納得できたら、その時点で投資一任契約を金融機関との間で結びます。

こうして運用がスタートするわけですが、私の知人はそれほど積極的にリスクを取って大きく増やしたいという意向がなく、やや保守的なポートフォリオでの運用を要望したそうです。

しかし、この1年、なかなか運用成果が上がらず、ポートフォリオには200万円程度の評価損が生じていました。ファンドラップである以上、さまざまな資産に分散投資しているはずですから、もし海外の株式や債券に投資するファンドがあれば、この円安で為替差益は出ているはずですし、少なくとも2023年は日本株も大きく上昇しました。なぜ200万円もの損失が生じているのでしょうか。

理由はすぐに分かりました。

まず、保守的な運用を希望したため、海外債券に投資するファンドが結構な比率で組み入れられていました。それも、為替リスクをヘッジするタイプです。

2022年から世界的にインフレ傾向が強まったことで、海外では米国をはじめ、ユーロ圏でも金利が大幅に引き上げられました。金利が上昇すると債券価格は下落します。したがって、債券を組み入れているファンドの運用成績は下落します。

もっとも、2022年から現在にかけて、外国為替市場では急激な円安が進みました。米ドルは円に対して30%程度、ユーロも対円で24%程度、強くなっています。為替ヘッジをしないタイプのファンドだったら、為替だけで結構大きなリターンが得られ、債券価格の下落分をある程度、相殺できたはずなのですが、為替ヘッジしたタイプでポートフォリオを構築していたため、債券価格の下落をそのまま受けてしまったのです。

そして、これが最大の問題点だったのですが、なぜか8本のファンドのうち4本が、単体のファンドで複数資産に分散投資するバランス型ファンドだったのです。

バランス型ファンドを4本組み入れて分散投資効果を高めるとでも言いたいのでしょうか。「屋上屋を架す」とは、まさにこのことです。

日本株ファンドを複数組み合わせても大したリスク分散効果が期待できないのと同じで、運用コンセプトが似通ったバランス型ファンドを複数組み合わせたところで、得られるリスク分散効果など、たかが知れています。