次に、個別ファンドではどのようなファンドに資金が流入しているのか、3つのカテゴリーについて確認します。
まず、外国株式型の月間資金流入額上位15ファンドについて確認します。
ランキング表(図5)のとおり、上位15本すべてがパッシブファンドになりました。そのうち14本がMSCIコクサイ指数に連動するパッシブファンドです。パッシブファンドはファンドごとに運用の巧拙がつきにくいため、主な差別化ポイントは運用管理費用になります。最近の投資信託市場ではパッシブファンドを中心に運用管理費用の低下が進んでおり、今回のランキング上位ファンドでは、0.10%のファンドが最も低位となった一方、0.28%のファンドも存在しています。取扱ファンドの運用管理費用が業界の平均と比べ、著しく高くないかは注意したいポイントです。
11位には「野村世界ESG株式インデックスファンド(確定拠出年金)」がランクインしました。当ファンドはFTSE社が公表するESG指数に連動する投資成果をめざすパッシブファンドです。同指数はESGの取り組みが優れた先進国企業の株式約100銘柄によって構成されます。1300銘柄ぐらいで構成されるMSCIコクサイとは組入銘柄が大きく異なるため、パフォーマンスも両者で差異が生まれました。直近6カ月の同ファンドのリターンは20.3%とMSCIコクサイのパッシブファンドを上回っています。
図5 2023年9月 外国株式型(DC専用ファンド) 拡大図表示
出所:三菱アセット・ブレインズ
次に、国内株式型の月間資金流入額上位15ファンドについて確認します(図6)。
上位15ファンドのうち9本がパッシブファンドとなりました。外国株式型と比べると、アクティブファンドが多くなっています。バリューと名の付くファンドが多く、バリュー・割安株投資の人気の強さがうかがえます。
一方で、8位の「ひふみ年金」と12位の「シュローダー・日本ファンド(確定拠出年金)」は、成長性と割安性の両方に着目する少し変わったファンドです。企業の長期的な成長性を分析した上で、期待される将来の株価に対し現在の株価が割安かを判断して投資します。これらの手法はグロース・アット・リーズナブル・プライスの頭文字をとってGARP運用とも呼ばれ、グロースとバリュー双方の性格を併せ持った投資として注目を集めています。
図6 2023年9月 国内株式型(DC専用ファンド) 拡大図表示
出所:三菱アセット・ブレインズ
最後に、複合資産型の月間資金流入額上位15ファンドです(図7)。三井住友トラスト・アセットマネジメントの「分散投資コア戦略ファンド」が2位と7位にランクインしました。相場環境に応じて資産配分を変更することに加えて、組入資産ではアクティブ運用を行うことから、運用管理費用も高めとなっています。
4位の「DC世界経済インデックスファンド」は、世界経済全体の発展を享受するために、日本、先進国、新興国のGDP総額の比率を参考に資産配分を決定するファンドです。資産配分は年1回変更され、各資産ではパッシブ運用を行います。新興国の成長を含めた世界経済の成長の果実を満遍なく受け取りたい、という投資家に適したファンドと言えます。
図7 2023年9月 複合資産型(DC専用ファンド) 拡大図表示
出所:三菱アセット・ブレインズ
DCファンドの性格として、パッシブファンドが資金流入の中心となるのはおおむね一貫した傾向ですが、市場を上回るリターンの獲得や資産価値の保全など、加入者のさまざまなニーズに応えるためにアクティブファンドが果たす役割は重要といえます。アクティブファンドの商品性を正確に理解することに加え、良し悪しも含めた見極めが今後も求められると言えるでしょう。
資金流出入動向の説明については以上です。