「暮らしまるごと」カバーするヤマダの戦略

ヤマダホールディングスが大塚家具を取得した狙いもまた、ビジネスモデルの変革でした。

ヤマダホールディングスは2010年代前半から「第三の創業期」と位置付け、衣食住の「住」に特化し家電以外の領域、特に住宅分野への進出を強化しています。2011年に住宅メーカーのエス・バイ・エルを子会社化したほか、2012年には住宅設備メーカーのハウステックを、さらに2017年には住宅リフォームのナカヤマを買収しました。大塚家具の買収は、インテリア部門の強化を目指したものとみられています。

店舗の改革も進められました。2017年から展開する「家電住まいる館」では、家電だけでなくインテリアの販売を行うほか、住宅リフォームも請け負っています。2021年には、2018年に公表した「暮らしまるごと」戦略を体現する新コンセプト店「LIFE SELECT」をスタートさせ、非家電の割合を高めた大型店舗の展開が進んでいます。

家電以外の取り組みは業績にも貢献しています。家電や情報家電の売上高は減少傾向にありますが、住宅や家具・インテリアはおおむね堅調で、本業の落ち込みをカバーする構図が続いています。特に住宅事業が含まれる「住建事業」は堅調で、セグメント利益は営業利益全体のおよそ2割を占めるほどになりました。

【部門別売上高(2023年3月期)】
・家電:8582.10億円(-3.1%)
・情報家電:3091.19億円(+1.6%)
・住宅関連:2918.23億円(+1.8%)
・家具・インテリア、GMS:785.67億円(+3.3%)
※()は前期比

出所:ヤマダホールディングス 決算説明会資料

【ヤマダホールディングスのセグメント業績(2023年3月期)】

  売上高 営業利益
 デンキ事業   1兆3108.95億円 318.16億円
 住建事業 2723.60億円 85.76億円
 金融事業 24.78億円 2.83億円
 環境事業 318.03億円 14.89億円
 その他事業 325.26億円 10.65億円
(参考)全体     1兆6005.86億円    440.66億円


出所:ヤマダホールディングス 決算短信

ヤマダホールディングスは2021年、2024年度までに売上高2兆円を目指す中期経営計画を発表しました。「暮らしまるごと」戦略は根幹を担っています。家電以外の事業の成否は、今後もヤマダホールディングスにとって重要な要素となりそうです。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)