「楽天モバイル」の不振が報じられて久しい楽天グループは、モバイル事業の赤字をその他のコア事業で凌ぐ状況が続いています。『楽天トラベル』はその1つです。
楽天トラベルは今でこそ業界トップクラスのシェアを握りますが、リリース直後はシェアを争うプレイヤーの1人に過ぎませんでした。しかし当時のライバルを買収したことで一挙に有力な宿泊予約サイトへと成長します。当時の経緯を振り返ってみましょう。
ライバルだった「旅の窓口」を323億円で買収
1997年に『楽天市場』をリリースしEC市場で覇権を握った楽天は、旅行予約事業へ進出を目指します。当時はマイトリップ・ネットの『旅の窓口』が旅行予約サイト最大手とみられていました。
マイトリップ・ネットは日立造船グループから誕生したベンチャー企業です。これに対抗するため、楽天は2001年に楽天トラベルをリリースしシェア争いを始めます。
しかしわずか2年後、マイトリップ・ネットが楽天に買収される形で競争は終わります。当時、日立造船グループは業績不振に陥っていました。そこで楽天がマイトリップ・ネットの買収を持ちかけたのです。日立造船はこれに応じ、2003年9月に323億円で楽天がマイトリップ・ネット全株式を取得し完全子会社化しました。
買収費用はマイトリップ・ネットの純利益の58倍にも上りましたが、楽天は回収できると踏んだようです。
【マイトリップ・ネットの業績(2003年3月期)】
・売上高:31.84億円
・営業利益:10.93億円
・経常利益:10.98億円
・純利益:5.55億円
出所:楽天グループ リリース
また投資家も、マイトリップ・ネットは高い買い物とは思っていなかったようです。買収を発表すると、その費用が嫌気され株価が下落することは珍しくありません。しかしマイトリップ・ネットの買収を発表した楽天の株式は大きく値上がりしました。楽天市場と旅の窓口のシナジーは、投資家にも描きやすかったのかもしれません。
【当時の楽天の株価(日足終値、2003年8月~10月)】