魅力は「支援金」と「家賃の安さ」

山梨県には移住支援金制度があり、都内から移住した世帯には諸条件を満たせば100万円が支給されるところが魅力でした。

また、自治体の世話で4LDK・2階建ての空き家を月額2万円で借りられました。都内の賃貸マンションの家賃は15万円を超えていましたから、住居費だけでもかなりの負担減です。

ちょっと車を走らせれば地元の道の駅で、新鮮な肉や野菜、卵、乳製品などを格安の値段で購入することもできます。

新しい勤務先となる地元企業の給料は前の会社に比べると3割ほど減ってしまいますが、妻も道の駅のパートという職を得たこともあり、「この環境なら十分やっていける」と思っていました。今となっては全くの思い違いだったのですが……。

田舎暮らしを楽しめたのはわずか半年間

最初は全てが順調でした。高齢化が進むこのエリアでは40代の私たちでも「若い移住者」として歓迎されます。

地域のイベントに声をかけてくれたり、収穫したフルーツや手製のおかずを持ってきてくれたりと何かと親切にしてもらいました。子供たちも転校先の学校にすぐに慣れ、親しい友達ができたようでした。

私はほぼ毎日定時帰宅、子供たちも塾やスイミングスクールなどの習い事がなくなったせいか、家族で過ごす時間がぐんと増えました。

しかし、移住生活を心から楽しめたのは、最初の半年間くらいでした。私も妻も首都圏の出身で田舎生活の経験がなかったため、地方独特の密な人間関係を次第に苦痛に感じるようになったのです。