65歳定年時代の「iDeCoファースト」vs「iDeCoと一緒に退職手当」

先ほど、勤続年数が長くなると退職所得控除額が増え、税金が減って、退職手当の手取りが増えるとご説明しました。もっと言えば、退職所得控除額が退職手当よりも多くなれば、控除額が余ることになります。

この余った控除額の活用法として、60歳以降もiDeCoで積立を続け、退職手当と同じ年にiDeCo一時金を受け取る、というアイディアがあります。私はこれを「iDeCoと一緒に退職手当」なんて呼んでいます(何のひねりもありませんが……笑)。

具体的に試算してみましょうか。

例えば、先ほど確認したように、都道府県職員の退職手当平均額は2,204万円、60歳時の勤続年数が38年だとすると退職所得控除額は2,060万円(=40万円×20年+70万円×18年)ですから、控除額は余りませんね。

これが65歳定年になると、退職手当は同じ金額ですが、勤続年数は43年で退職所得控除額が2,410万円、控除額が206万円も余るのです(2,204万円-2,410万円=▲206万円)。この余った分だけ、iDeCo一時金を非課税で受け取る額が多くなる、という算段です。

なお、前回の記事では、65歳定年時代になると、60歳でiDeCo一時金、65歳で退職手当という税制上有利な受け取り方ができるようになると紹介しました。ただし、この「iDeCoファースト」という受け取り方は、60歳以降に貯蓄を取り崩さざるを得ない場合の“窮余の策”とも申し上げています。

ですから、まず考えるべきは、定年引上げに伴う給料減額や退職手当の支給繰り延べの悪影響をなんとかやりくりすることであり、それらをやりくりした上で、節税を兼ねたiDeCoという有利な貯蓄手段を長く続け、「iDeCoと一緒に退職手当」を受け取るのが理想だと、そんなふうに思っています。

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以上、前回と今回の2回にわたって、公務員の定年引上げに伴う影響を確認しました。繰り返しになりますが、この影響を確認することは、退職前後のライフプランを考える上では結構重要な話だと思います。

ただし、50代や60代になれば、それこそ、それぞれの皆さんのライフプランに応じて、定年引上げに伴う影響ばかりでなく、その備えや対策も異なってくるはずです。当然、私が申し上げたことが当てはまらない、そんな方々もたくさんいらっしゃることでしょう。ですから、これら記事は、公務員の皆さまにお読みいただいたとしても、万人の方に万全の対策を示せるものではないと思っています。

そんなことを思いながら執筆した記事ではありますが、ここまでお読みいただいた皆さまが、定年引上げに伴う気付きであるとか、これからのライフプランを考える上でのきっかけを一つでも二つでも見つけることができたのであれば、とても嬉しく思う次第です。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。