苦しい国内事業 歴史ある工場も閉鎖へ

好調な海外に対し、アサヒグループは国内に対しては慎重な考えを持っているようです。近年の増収は海外事業によってもたらされており、国内事業は停滞が続いてきました。少子高齢化やアルコール離れなど、日本のビール事業を取り巻く環境が年々厳しくなっていることが背景にあるようです。

【海外事業を除く売上高】

出所:アサヒグループホールディングス 決算短信より著者作成

2022年には国内市場の拡大が見込めないとし、主要な生産拠点だった神奈川工場と四国工場(愛媛県)の閉鎖にも踏み切りました。また1959年から続くニッカウヰスキー西宮工場(兵庫県)も2024年に操業を終了し、生産機能を吹田工場(大阪府)へ移管することも決まっています。

苦しい国内で、アサヒグループが成長を見込む領域の1つが「酵母」です。2023年3月に日本事業の戦略を公表し、これまで主に食品向けに提供していた酵母を飼料添加物やサプリメント、基礎化粧品など、2兆円規模の市場への参入を目指すと表明しました。また「L-92乳酸菌」を軸とした商品開発を進めることも明かしています。

もっとも、これらは先行する国内大手との競争が見込まれることから、収益化は簡単ではないでしょう。アサヒグループの海外シフトは今後も続くかもしれません。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)