「失敗物件」をつかんだあとに待っていること
ところで、なぜAさんはマンション投資で失敗していることを、業者に知られてしまったのでしょうか。最初にAさんに“もうからない”ワンルームマンションを売却した不動産業者の関連会社である可能性もゼロではありませんが、私はおそらく違うと思います。
というのも、ワンルームマンションは、もともと1棟を所有している不動産業者から別の業者が買い取って、それを一部屋ずつ分譲しているケースが多く「このマンションは区分所有者が高値でつかまされているな」といったことは、ほかの不動産業者が見れば、わかってしまうのですね。
そのうえ、不動産購入の際には登記をしますので、登記簿を見ればワンルームマンションの所有者の住所がわかります。登記簿には抵当権の債権額も載っているので、困っていそうな人の電話番号を調べて、業者がセールスをかけてくるのです。
「マンション3棟買い」エリート会社員がハマったローン地獄
もう1人、ご相談者で印象に残っているのが九州在住のBさんです。Bさんは40代の有名企業勤めのサラリーマンで年収は約800万円。地方では勝ち組といえる年収クラスでした。Bさんは、3棟ものマンションを購入していました。1棟は首都圏、ほかには九州と中部地方に、それぞれ1棟ずつを所有していました。
Bさんは自分の投資がよくない状況であることに、あまり気づいていませんでした。ただ、最近になって空室も増え、あきらかに収支がマイナスなので、売却も考えたいと当社に相談に来られました。
ご相談いただいた時、なぜこの資産背景とご年収で1棟マンションが3棟も所有できるのだろうと不思議に思った私は、1棟マンションを購入した時の契約書や書類を見せてもらいました。すると、典型的な「見せ金」という手法で買わされていたことが分かります。簡単に言うと、お客さまから通帳を預かって、そこに不動産業者が一時的にお金を振り込み、その預金額をもとに銀行のローン審査を通していたのです。もちろん、審査が通れば、お金はまた口座から抜かれます。
Bさんのパターンも典型的な「見せ金スキーム」でした。もっと怖いのは、Bさんはそのことに気づいていなかったのです。必要書類として預金通帳を仲介業者に渡し、言われるがままローンを組んでいました。
ご本人は「あれ、この4000万円はなんだろう?」とおっしゃっていて、まったく気にしていなかったようです。本来であれば中古物件ではありましたが、3棟で2億円もの銀行ローンを結果的に組まされていました。
当社で査定をしましたが、築30年ほどのマンションで、全部合わせてもローンの残債よりもはるかに低い金額でしか売れない物件でした。正しい資産背景と預貯金の額で銀行審査をしていれば、1棟目の購入も難しかったかもしれませんが、結果的に3棟もの収益性の悪い地方のマンションを言葉巧みに買わされてしまってました。正直に言って、手の施しようがありません。これからマンションも老朽化していき、修繕費がかさみ、空室も増え、赤字が垂れ流されていく状況が目に見えています。自己破産も選択肢の一つとしなければならない非常に厳しい状況です。