・長時間労働が常態化…残業規制の適用外?「保護されない」ある業界

1997年7月1日、アヘン戦争から150年以上イギリスによって統治されていた香港が中国へ返還されました。返還に際して、両国は2047年まで香港の高度な自治を認める「一国二制度」で合意していたため、香港は中国にありながらイギリス流の仕組みが維持されてきました。

返還以来、おおむね右肩上がりに上昇してきた香港株式は、ここ数年は弱気相場が続いています。新型コロナウイルスも影響していそうですが、主要な株価指数である「香港ハンセン指数」がピークを付けたのは2018年ですから、コロナショックの前から下落傾向にあることが分かります。

【香港ハンセン指数(月足終値)】

Investing.comより著者作成

好調が続いた香港株式は、なぜ5年以上軟調な展開が続いているのでしょうか。

「安全維持法」で人口流出が続く香港

香港株式の弱気相場が始まった2018年は米中対立が激化した年でした。互いに相手を非難し合い、制裁関税の応酬が繰り広げられたニュースを覚えている人も多いでしょう。世界の株式市場では不透明感が強まり、日経平均も年次ベースでアベノミクス以来初の下落を記録します。

2019年からは、香港独自の事情も生じてきました。中国本土へ容疑者の引き渡しを可能とする「逃亡犯条例」の改正案が公表されると、香港で大規模なデモが行われるようになります。経済活動の停滞が懸念され、株式市場に下落圧力が働きます。

2020年6月には「香港国家安全維持法」が施行され、中国本土の方針に不満のある人は外国人も含め逮捕される可能性が生じてきました。同法は罪となる線引きが曖昧で、また秘密裁判で無期懲役が科される可能性もあり、デモは急速に終息へ向かいます。香港の人口は2020年から減少していますが、香港国家安全維持法の影響を指摘する声は少なくありません。

【香港の人口推移】

IMF 世界経済見通し(2023年4月)より著者作成

中国の香港に対する締め付けは年々増しており、現在も民主派の逮捕や議会からの締め出しが続いています。香港市場の主力ハイテク企業にも規制の手が伸びており、中国の干渉が強まることを懸念した売りが散見されるようになっています。