ゼロコロナ終了も景気が戻らない中国

香港株の下押し要因として働いていた強力なロックダウンを伴う感染対策(いわゆる「ゼロコロナ政策」)は、2023年1月に事実上終了します。往来が自由化されることで経済が再開に向かうことが期待され、株式市場を押し上げるとの見方が強まりました。

しかし投資家は中国の景気回復を期待し過ぎたのかもしれません。3月の全人代(全国人民代表大会)で発表された2023年の経済成長率目標は5%前後と、前年より0.5ポイント引き下げられました。経済指標も景気回復の弱さを表しており、4月の製造業PMI(購買担当者景気指数)は49.5と景気判断の節目となる50を下回ったほか、同月の工業生産も5カ月ぶりの減少となっています。

株式市場もさえません。香港ハンセン指数は3月には早々と前年末の水準を下回り、上海証券取引所の株価を表す「上海総合指数」もほぼ横ばいで推移しています。

【香港ハンセン指数と上海総合指数の推移(2022年末=100)】

Investing.comより著者作成

ゼロコロナを終了してもなかなか景気が回復しないことから、一部では金融緩和を期待する声が聞かれるようになりました。中国本土は香港よりもインフレが落ち着いており、利下げの余地はありそうです。

しかし製造業が不振な一方、小売りや飲食では回復が見られており、積極的な金融緩和には慎重な姿勢を見せています。中央銀行の中国人民銀行は、5月までに9カ月連続で政策金利を据え置きました(※)。

※中国人民銀行は2023年6月20日、利下げを実施しました 。