株価見通しで一目置かれる似鳥会長

似鳥氏は経済予測の達人としても知られます。ニトリは海外から商品を仕入れて国内で販売するビジネスモデルから、円安下では利益が圧迫されてしまいます。これを緩和するため、ニトリは円高時に為替予約を行い割安に輸入する戦略を取っています。そのタイミングを計る似鳥氏の相場見通しは、これまで多くのメディアで取り上げられてきました。

特に2018年の見通しはほぼ的中したことから大きな話題を集めます。似鳥氏は2017年末に「2018年のドル円は年平均108円、日経平均株価は2018年末に19500円」と見込み、マーケットはそれをなぞるように動きました。以来、似鳥氏の予測には多くの投資家が関心を寄せるようになり、相場展望を語る姿は年末年始の風物詩となっています。

【日経平均株価とドル円(日足終値、2017年末~2018年末)】

 

出所:Investing.comより著者作成

しかし経済予測の達人も、2022年度の荒れたドル円相場は見通せなかったようです。当時のドル円はアメリカの金利上昇を受け150円台に向かって強く円安が進んだあと、日本政府の為替介入や日本銀行の金融政策方針の変更などから一転して130円台まで円高が進みました。

ニトリは円安に備え2022年9月分までは1ドル=114.90円で為替予約していたものの、10月以降の予約レートは147.80円でした。このため、下半期では為替取引に伴って損失が生じたとみられています。

【ドル円(日足終値、2022年4月~2023年3月)】

 

出所:Investing.comより著者作成

しかし、実は似鳥氏は2022年2月期の決算説明会では「2022年10月以降は円高・ドル安傾向になる」との見通しを示していました。説明会は2022年3月末に開催されたもので、この予測はぴしゃりと当たっているのですが、迷いが出たのか実際の取引に生かすことはできなかったようです。

なお、似鳥氏は2022年12月に開催された決算説明会で、2023年のドル円相場は110~120円の円高方向、2023年末の日経平均株価は3万1000円との見通しを示しました。この予想は当たるのでしょうか。相場の行方が注目されます。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)