・24億が4000億に… テスラ株で「大もうけ」したパナソニックが喜べない理由

半導体設計大手の英アーム社は2023年4月、アメリカへ上場を申請しました。同社はソフトバンクグループの傘下にあり、今後は新規上場で手にする巨額な資金の使い道が注目されそうです。

ソフトバンクグループは、現在では多くの革新的な企業へ投資するコングロマリットとして知られています。同社はいかにして現在の地位を手に入れたのでしょうか。その軌跡をたどりましょう。

創業のきっかけは「ロケット・ササキ」との出会い

ソフトバンクグループの設立には1人の工学博士が大きくかかわっています。博士の名は佐々木正(ささき・ただし)、シャープで小型電卓の開発を指揮し、世界で初めてLSI電卓を投入した人物で知られます。佐々木博士の開発スピードは目覚ましく、電卓を共同開発した米ロックウェルの技術者からは親しみを込めて「ロケット・ササキ」と呼ばれるほどでした。

ソフトバンクグループの創業者である孫正義(そん・まさよし)氏は、カリフォルニア大学在学中に佐々木博士と出会います。孫氏は日本に一時帰国し、開発した電子翻訳機をメーカーに売り込んでいたところでした。

他のメーカーがことごとく断っていたところ、佐々木博士は孫氏の熱意と先見性を見抜き、英語版の電子翻訳機を2000万円で買い取ることを即決しました。その後も複数の言語で出資したと伝えられており、総額は1億6000万円にも上るとみられています。

佐々木博士と孫氏のつながりは、これだけではありません。孫氏は電子翻訳機で調達した資金を基に1981年に現在のソフトバンクグループを設立するも、すぐに資金繰りに窮するようになりました。

孫氏は第一勧業銀行(現・みずほフィナンシャルグループ)に1億円の融資を申し込みますが、実績がないことを理由に断られてしまいます。それを聞いた佐々木博士は個人保証を引き受け、孫氏は無担保で1億円もの融資を受けられることになりました。孫氏が佐々木博士と出会わなければ、今日のソフトバンクグループはなかったかもしれません。