サウジとUAEから資金を引き出した「ビジョン・ファンド」とは

携帯電話事業を盤石なものとしたソフトバンクグループは、M&A攻勢を強め、日本有数の投資会社へと成長しました。それを象徴する出来事が「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の設立です。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドは、テクノロジー分野へ出資することを目的に設立されました。孫氏の投資手腕は世界的に知られており、2017年5月までにサウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンドやUAEのムバダラ開発公社、さらにアップルやクアルコムといった大企業などから10兆円規模の出資を集めることに成功します。

2019年7月には第2号ファンドが設立され、同じく海外の大企業や国内の大手金融機関などから約12兆円の出資を集めました。これらを元手に、上場・非上場を問わず、主に世界のハイテク企業に幅広く投資しています。ほかに、ラテンアメリカ市場に特化して投資する「ソフトバンク・ラテンアメリカ・ファンド」も運用しています。

【ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資の状況(2022年3月末時点)】

 

ソフトバンク・ビジョン・ファンドのインパクトは大きく、2021年3月期には同ファンドの好調から4兆9879億円もの純利益を稼ぎだしました。これは国内企業で過去最大だとみられています。しかし翌期は反対に1兆7080億円の純損失となっており、また2022年4~6月は四半期として国内最悪とみられる3兆1627億円の赤字を計上しました。黒字でも赤字でも規模が桁違いに大きいソフトバンクグループの決算は、市場関係者の注目の的となっています。

【ソフトバンクグループの業績】

 

出所:ソフトバンクグループ 決算短信より著者作成

文/若山卓也(わかやまFPサービス)