自動車部品メーカーの意外な発明品

自動車部品メーカーの製品は車の内部にあるものが多く、普段私たちの目に触れる機会は多くありません。しかし業界大手のデンソーが発明した「QRコード」は、毎日のように利用する人も多いのではないでしょうか。

QRコードが誕生したのは1994年のことです。デンソーは自動車部品以外の事業への進出を検討していたところ、2次元コードの開発に目を付けました。デンソーは、従来の横方向にしか情報を持たない1次元コード(バーコード)だと容量が小さく、いずれ限界が来ると予測したのです。そこで横方向だけでなく縦方向にも情報を持ち、しかも機械が高速で読み取れる2次元コードの開発に乗り出しました。

当初は機械がコードを誤認するなどし、なかなか読み取り時間の短縮はかないませんでした。しかしコードの隅に「コードが存在する」ことを機械に知らせる印を入れることで、誤認を防ぐことに成功します。こうして情報の大容量化と読み取りの高速化を実現したQRコードは誕生しました。デンソーのQRコード開発部門は、2001年に「デンソーウェーブ」として独立します。

また、QRコードがここまで普及したのは、その優秀な機能のせいだけではありません。デンソーはQRコードについて特許を取得したものの、その技術を独占せずに公開し、誰でも無料で使えるようにしたのです。これによりQRコードは日本にとどまらず世界的に普及するようになりました。

QRコードは無料のため直接の収益は生まれませんが、その宣伝効果を考えればデンソーにとっては重要な財産となっているでしょう。QRコードを使用するためには、商標として社名を併記する必要があるからです。QRコードを無料で開放したデンソーの作戦勝ちといえるでしょう。

【デンソーの業績】

※2024年3月期(予想)は、2023年3月期における同社の予想

出所:デンソー 決算短信

【デンソーの株価】

Investing.comより著者作成

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。