近年、化粧品企業の株価が冴えません。主要な銘柄は直近5年で半値ほどに値下がりしました。コロナショックからの回復が鈍い企業も多く、株価は押される状況が続いています。

そんな中、ロート製薬の株式は堅調です。2024年4月末までの5年間で株価はおよそ2倍に上昇しました。

ライバル企業の株価が低迷する一方で、なぜロート製薬には買いが向かったのでしょうか。理由を探ってみましょう。またロート製薬が取り組む新規事業も紹介します。

「目」と「肌」のケア製品大手 人気ブランド多く業績は安定

まずロート製薬の概要を押さえましょう。

ロート製薬は医薬品や化粧品などを製造販売する企業です。主要な製品は目薬の「Vロート」や内服薬の「パンシロン」、機能性化粧品の「オバジ」や「肌ラボ」などがあります。子会社にはリップクリームの米メンソレータム社や「ボラギノール」の天藤製薬を持ちます。

社名はロートムンド博士に由来します。ロートムンド博士は、1909年発売の「ロート目薬」を処方した井上豊太郎(いのうえ・とよたろう)博士の恩師にあたる人物です。今や目薬はロート製薬の代名詞となっており、OTC(市販薬)領域では国内トップクラスのシェアを持つとみられます。

もっとも、売り上げの過半を占めるのはスキンケア製品です。スキンケア製品は海外でも人気があり大きな収益源となっています。例えば香港では「50の恵」ブランドが高シェアを持つほか、「メンソレータム」ブランドは中国やアメリカで浸透しています。

【製品別売上高(2023年度)】

  主な製品 売上高  
 アイケア  目薬、洗眼薬 534億円
 スキンケア  外皮用薬、日やけ止め、機能性化粧品  1768億円
 内服  胃腸薬、漢方薬 309億円
 その他  体外検査薬 97億円

出所:ロート製薬 決算三共資料

【地域別売上高(2023年度)】
・日本:1569億円(57.9%)
・アジア:788億円(29.1%)
・アメリカ:186億円(6.9%)
・ヨーロッパ:139億円(5.1%)
・その他:28億円(1.0%)
※()は構成比

出所:ロート製薬 決算短信

業績も安定的です。売り上げはおおむね右肩上がりで増加してきました。赤字は2002年度を最後に出していません。2023年度は売上高および各利益段階で過去最高を更新しました。純利益ベースでの増益は2023年度で6期連続です。

今期(2025年3月期)も増収増益を見込んでいます。また配当金の増額も計画しており、実現すれば連続増配記録は21に達します。

【ロート製薬の業績見通し(2025年3月期)】
・売上高:3000億円(+10.8%)
・営業益:430億円(+7.4%)
・経常益:440億円(+3.7%)
・純利益:320億円(+3.4%)
※()は前期比
※2024年3月期時点における同社の予想

出所:ロート製薬 決算短信