「130万円の壁」という言葉は多くの方が耳にしたことがあると思います。健康保険や年金といった“社保(社会保険)”で扶養に入れる条件と認識している方が多いでしょう。

年金の世界で“扶養”といえば、国民年金第3号被保険者制度※1のことを指しますが、130万円という収入要件さえ満たせば扶養に入り続けられるのでしょうか? また、“社保”として、よく一緒にくくられがちな健康保険と年金の扶養の条件には差異はないのでしょうか?

※1 第3号被保険者制度については当連載の第8回(“不公平”と非難される年金「第3号被保険者制度」―その裏で起きている“ある大変化”)でも取り上げました。そちらも合わせてご参照ください。

健康保険、年金…2大社会保険の“扶養”の定義

健康保険の扶養

会社員等は健康保険制度に被保険者として加入します。健康保険の被扶養者はその被保険者によって主として生計を維持されている日本国内に住む人(原則)とされています。

そして、そこには収入要件もあり、被扶養者の年収が被保険者の年収の半額未満※2で、かつ、被扶養者自身の年収が原則130万円未満とされています。

※2 同居の場合。別居の場合は被扶養者の収入が被保険者の仕送り額未満。

年金の扶養

一方、国民年金の第3号被保険者は「国民年金の第2号被保険者の被扶養配偶者」を指します。

そして、収入については健康保険の扶養の要件をもとに判定がされます。つまり、先述の健康保険の扶養と同じ基準で、第3号被保険者としての認定がされることになります※3

※3 なお、年収130万円未満でも、社会保険の適用拡大により、賃金月額8万8000円以上で週20時間勤務等により健康保険・厚生年金の被保険者となる場合は、いずれも扶養に入れません。

健康保険の被扶養者になると自ら健康保険料を納付することなく、被扶養者としての保険給付を受けることができ、第3号被保険者も自ら年金保険料を納付することなく、納付したものと扱われて老齢基礎年金の受給資格や年金額が計算されます。

ここまでお読みになった方は「なんだ、やっぱり健康保険も年金も扶養の条件は同じじゃないか」と感じたかもしれません。

しかし、年収要件だけでは両者の違いを捉えられないという、大きな落とし穴があります。