給与未払いのまま会社が倒産…知っておきたい「未払い賃金の立て替え払い制度」

堀越学園では教職員の未払い賃金も大きな問題の1つでしたが、その一部は労働者健康安全機構の「未払い賃金の立て替え払い制度」の対象となりました。全額には及びませんが、被害の救済に役立ったようです。

未払い賃金の立て替え払い制度とは、労働者健康安全機構が実施する賃金援護事業の1つで、倒産で発生した未払い賃金の約80%を同機構が立て替える仕組みです。

未払いの賃金は、本来は労働者が倒産した企業などに請求しますが、破綻する企業に賃金を支払うだけの財産が残っていないことも少なくありません。そこで労働者健康安全機構が間に立ち、未払い賃金を労働者に立て替えておき、未払い賃金の請求権は同機構が引き継いで倒産企業などに請求します。減額されるとはいえ、制度を利用すればより確実に未払い賃金を回収することができるでしょう。

ただし、全ての報酬が対象となるわけではありません。未払い賃金の立て替え払い制度の対象となる「未払い賃金」とは、基本給や通勤手当といった「定期賃金」と「退職手当」です。賞与(ボーナス)など臨時的に支払われるものは基本的に制度の対象外のため注意しましょう。

【未払い賃金の立て替え払い制度の対象となる「未払い賃金」】

※未払い賃金総額が2万円未満の場合は対象外

また制度の利用には条件もあります。原則として対象者は労働者である必要があり、事業主と同居する親族や代表権のある役員は利用することができません。さらに倒産から一定期間内に退職していること、未払い賃金の存在が認められることも求められます。

【未払い賃金の立て替え払い制度を利用する条件】
・労災保険の適用事業所で雇用され、倒産に伴い賃金が未払いのまま退職した労働者
・倒産の6カ月前から2年の間にその企業を退職
・未払い賃金について、破産管財人の証明または労働基準監督署長の確認を受ける
​※いずれも満たす必要がある

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。