制度の管理コストを負担しても
十分な税優遇効果

注意点の3つ目、制度の管理コストについて検討してみます。

イニシャルコストは2,829円で、iDeCo加入時の口座開設費用としてどの金融機関でも発生します。ランニングコストは金融機関により異なりますが、最低金額は月171円です。この費用とiDeCo掛金による節税を比較してみましょう。

【所得税率5%の場合】
課税所得のある会社員は、最低でも所得税5%が課税されています。住民税は一律10%のため、あわせて15%が会社員の最低課税率です。
イニシャルコスト(2,829円)分は、18,860円の掛金拠出でカバーできます(口座開設時の1年目)。
2,829÷15%=18,860
ランニングコストについては、毎月の掛金1,140円でカバーできます。
171÷15%(5%+10%)=1,140

【所得税率10%の場合】
所得が多く、所得税率が5%よりも大きい10%の場合は、住民税とあわせて20%が課税されています。そのため、所得税率5%の場合よりも、少ない掛金額で手数料がカバーできることになります。
イニシャルコスト(2,829円)分は14,145円の掛金拠出でカバーできます(口座開設時の1年目)。
2,829÷20%=14,145
ランニングコストについては、毎月の掛金855円でカバーできます。
171÷20%(10%+10%)=855

マッチング拠出のない企業型DCの加入者は、iDeCoの最低掛金額5,000円を毎月拠出する余裕があれば、管理コスト分を補って余りある税優遇が得られることになります。

マッチング拠出がある企業型DC加入者については、ランニングコスト分を考慮して、マッチング拠出の掛金上限とiDeCo掛金を比較しなおしてみましょう。
所得税率5%の場合、マッチング拠出の上限金額(※)よりも、iDeCoのほうが1,140円多く拠出できるのであれば、iDeCoのほうが税優遇を多く受けられることになります。

※マッチング拠出の上限金額は、事業主掛金以下かつ事業主掛金とあわせて拠出限度額(5.5万円もしくは2.75万円)以下

企業型DCの金融機関に相談してみよう

マッチング拠出もiDeCoも、原則60歳まで引き出せません。将来の老後資産に回せる金額が、マッチング拠出の範囲内という人もいるでしょう。また、マッチング拠出は拠出時点で税の手続きが終わっているため、年末調整も不要で手軽というメリットもあります。

一方で、企業型DCの資格喪失年齢が60歳の企業にお勤めで、65歳まで掛金拠出できるiDeCoを現役時からスタートしておきたい、という考え方もあるかと思います。選択肢が増えると検討項目も増えます。

企業型DCの運営管理機関の多くは、相談体制を整えています。気軽に問い合わせをしてみるのも、一つの方法です。また、iDeCoの金融機関として企業型DCと同じ会社を選択すると、iDeCoと企業型DCの残高情報をシームレスで確認できるサービスも設定されているようです。

ベストな組み合わせで税優遇を活用して、老後資産形成を進めてみてはいかがでしょうか。

<注1>手数料にかかる部分は税込み金額で表示しています。
<注2>企業型DCとiDeCoを同時加入する場合は毎月払いのみ可能(数カ月分をまとめて拠出する、年払いにする、などは不可)なため、毎月拠出パターンのみを記載。