妻の目から大粒の涙…義弟の家計には厳しいメス

翌週事務所を再訪した際、岩下さんは妻を前にこう切り出しました。

「弟さんがかわいいお気持ちは分かります。でも、百合子さんの今のご家族は岡本さんではありませんか?」

さらに、私が配偶者居住権を利用して妻に私の死後も自宅に住み続ける権利を渡そうとしていることなどを、切々と話したのです。話を聞くうちに、妻の目から大粒の涙がこぼれました。「私が弟をダメにしていたのかもしれません」。妻の言葉に大きくうなずいた岩下さんは、「乗りかかった船なので、弟さんご一家の家計についてもフォローさせていただきます」と笑顔を見せました。

そして、1週間後には義弟夫婦の家計診断を行い、大胆な家計の見直しを迫ったのです。家賃の安い公営住宅への住み替えに、義弟のパチンコ代や外食依存の食費の大幅カット。さらに、次男は自宅通学にして学費を自分のアルバイト収入で賄わせるなどなかなか厳しい内容でしたが、義弟一家もこれまで妻に家計を援助してもらった負い目があり、やむなく受け入れたようです。

老後の“趣味用”資金はiDeCoで積み立て

義弟への支援がなくなり、浮いたお金で岩下さんが提案してくれたのが、毎月夫婦で温泉旅行を楽しむこと、そして、iDeCo(個人型確定拠出年金)で将来に備えた積み立てをすることでした。

「岡本さんには既に立派なご自宅もあり、お2人ともずっと会社員でいらしたので、リタイア後は生活に困らない程度の年金が受け取れます。ですから、お2人がお元気な間趣味やレジャーを楽しむ資金だけ、iDeCoで確保しておくといいと思います。今は日本でもインフレが進んでいますが、現行の公的年金制度だと物価上昇にはほとんど対応できません。iDeCoを使ってインフレに強い株式などで運用しておくことも大切なんです」