為替差益で押し上げられた円ベースのリターン
積立を中心に人気の「米S&P500種株価指数」への連動を目指す代表的なインデックスファンドと、S&P500指数の現地通貨(米ドル)ベースの年初来の値動きを比較すると、今年3月中旬以降、リターンの差が拡大していることが分かる。両者のリターン格差は、9月13日に最大で23ポイントまで拡大し、足元でも20ポイント前後で推移している。
この差は必ずしも全てが為替によってもたらされているわけではないが、春先以降の急速な円安進行によって為替差益が発生し、円ベースのリターンが大きく押し上げられてきたのである。
国内籍の投資信託は基準価額が円建て算出されるため、リターンも円ベースで語られることが多い。しかし、いわゆるプロの投資家(機関投資家)の世界では、リターンは基本的に現地通貨=ドル建てで、そこに為替を加味するとどうなるかという考え方をする。
実は、S&P500指数のドル建てのリターンは年初来でマイナス圏に沈んだまま、一度もプラス圏に浮上していない。一方、円建てのインデックスファンドのリターン(コスト控除後)は、円安進行が加速した6月から9月半ばにかけ、一気に7%台まで上昇した。その結果が、前述した20ポイントの差として表れている。
もっとも、円安の進行は今年に始まったことではない。昨年2021年も、円が米ドルに対して10%以上下落した。2021年の初めごろ、1ドル=103円台だったことを覚えている人がどれだけいるだろう。米国株式市場が近年、緩和的な金融政策と好調な企業業績を背景に力強い上昇を続けてきたことは事実だが、冷静にリターンを分解してみると、円安進行による押し上げ効果も大きいのである。
そうした円安特需に沸いていたインデックスファンドだが、9月中旬以降、ついに円ベースのリターンもマイナス圏に突入してしまった。昨年末に一括購入した後、追加購入することなくそのまま保有し続けている投資家はさほど多くないだろうが、米国株式市場にかつてほどの勢いがないということはお分かりいただけるだろう。
一方、積立投資家は、こうした相場環境でもドルコスト平均法の効果が表れ、含み益を獲得できているという人も多いと思われる。積立投資の醍醐味を実感できているのではないだろうか。