兄家族のお金の使い方に違和感

母は、父の遺族年金や自分の年金が振り込まれる口座と、まとまった金額を置いておく口座を分けていました。そして、後者の預金通帳を近くに住む兄に預けていたのです。大学教授の兄は若い頃から学究肌で、家のことやお金のことには無関心。全てを兄嫁に丸投げしているように見えました。

厄介なのはこの兄嫁で、小さな貿易会社の事務職として働いているのですが、スープの冷めない距離にいながら仕事を盾にして一切母の手伝いをしようとしません。ですから、通院や買い物、介護保険の認定調査など何かあるたびに、私や妹が1時間以上電車を乗り継いで通っていました。妹は兄嫁に面と向かって「少しは長男の嫁らしいことをしてくれてもいいんじゃないですか」と突っかかったこともありましたが、馬の耳に風です。

その兄嫁が母のお金を使い込んでいるのではないかと妹から聞かされたのは、1年ほど前のことでした。兄夫婦には2人の子供がいます。下の娘は大学卒業後、米国の大学院に留学しています。上の息子はちょうどその頃結婚式を挙げたのですが、会場は都内の有名外資系ホテル。コロナ禍なのに招待客は100人以上で、着席ディナーの大変豪華な式でした。

「共働きとはいえ、兄さんも義姉さんもそれほど稼いでいるわけじゃないでしょう? 留学費用や結婚式の費用は、絶対、お母さんのお金から出していると思う」

妹は半ば決め付けたように言います。まさかとは思いましたが、一応、母に確認してもらおうという話になりました。母は「孝弘(兄の名前)は生真面目な人間だから、そんなことはないと思うわよ」と笑っていましたが、母が催促しても、兄夫婦は「忙しい」「用事がある」などと言って、なかなか預金通帳を持ってきません。