松野さん(仮名、50代男性)は父親に高額な現預金があることから、相続税が高くなることを心配していました。相続税対策をネットで調べたところ、「不動産を購入すると相続税を効果的に減らせる」「賃貸で経営すればさらに節税効果がある」と知ります。

早速、父親と共に不動産会社に行き、紹介された「おすすめ物件」を購入。これにより父親の現金資産はほとんどなくなりましたが、無事にアパート経営を開始します。

しかし、数年後に父親が89歳で死去し、松野さんがいざ相続税を払おうとすると大問題が。相続税は予想外に高額の500万円――。「現金一括」で支払う必要があるのに、手元にそんなお金はなかったのです。「相続税を払えない」事態に陥った松野さんは……。

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延納手続きを選択

松野さんが税務署や税理士に相談したところ、「延納」という方法を選択せざるを得ないことが分かりました。

延納とは、相続税を分割払いする方法です。税務署の承認を受ければ相続税を分割で払っていけるのです。ただし、延納すると支払期間中に利子税がかかりますし、担保も提供しなければならないなどデメリットがあります。

相続税の支払いに追われる生活に

結局、松野さんは相続税を減らすことはできても、相続税の支払いに追われる生活になってしまいました。父親は資産を持っていましたが、松野さん本人は収入も低くこれといった資産も持ち合わせていなかったのです。

もしも現金をそのまま相続していたら、問題なく遺産の中から相続税を払えたはずです。まさか「節税によって相続税を払えなくなる」とは思いもせず、松野さんは「落とし穴」にはまってしまったといえるでしょう。