「相続税はできれば少ないほうがありがたい」と考える方は多いでしょう。
実際に有効な相続税対策の方法はいくつもあります。ただ、節税を追求しすぎると相続税を払えなくなってしまうケースがあるので注意しなければなりません。
今回は相続税の節税対策に潜む落とし穴の事例をご紹介します。松野さん(仮名)一家が相続税を払えなくなったケースを見てみましょう。
松野さん一家の場合
松野さん(仮名、50代男性)には80代の父親がいました。父親には高額な現預金があるのを知っていたので、松野さんは「相続税が高くなるのでは?」と常々心配していたのです。
実際、父親の資産内容から相続税額を調べてみると、相続税は数百万円にもなりそうでした。
松野さんにはそんな多額の預金はありません。「そんなに払えない! できれば払いたくない」と考えて節税対策方法をネットで検索して調べ始めました。
アパート経営で節税できると知り…
松野さんが相続税の節税対策を見ていると、あるサイトに「不動産を購入すると相続税を効果的に減らせる」と書いてありました。
不動産は、現金よりも相続税評価額が低くなるからです。土地の場合には約8割、建物の場合には約7割の評価になります。現金資産が多い場合、単純に土地建物を購入するだけで相続税を減らせるのです。
また不動産を賃貸すると、さらに相続税を減らせるとのことでした。賃貸不動産の場合、借地権割合や借家権割合の分、相続税評価額から差し引けるからです。そのため「土地上にアパートを建築して経営すると良い」などという案内が出ていて、不動産会社も紹介されていました。
松野さんは「これは良い節税方法に違いない!」と思い、父親にそのことを話しました。すると父親も納得し、2人で不動産会社に話を聞きに行くことにしました。