信託報酬引き下げの動き
現状も差があるiDeCoのパッシブ(インデックス)商品の信託報酬ですが、2017年以降全体としては下がっています。それは法改正でiDeCoに加入できる人が公務員や専業主婦などにも拡がり、運営管理機関の顧客獲得競争が激化したためです。比較しやすい口座管理料は一気に下がり、その次に差別化としてパッシブ(インデックス)商品で低コストの商品が並んでいるかどうかが注目されるようになったからです。結果として運用会社各社は従来のファンドのコスト部分だけ下げた低コストパッシブ(インデックス)を続々と新設し、現在各資産クラス共に最安の信託報酬の商品が10本程度横並びである状態です。
普通に考えればわざわざ新設しなくても今ある高コストの商品のコストを下げればそれで済むのに、と思うのですが、信託報酬の引き下げは運用会社だけでなく、その収入を分け合っている販売会社である銀行・証券会社・保険会社と、投資信託資産の管理をしている信託銀行の収益にも大きく影響します。例えば人気の投資信託であれば残高が数千億単位ですから、0.1%の引き下げでも年間億単位の収益を自ら手放すことになります。ですから、なかなか調整は進みません。
それでもニッセイアセットマネジメントや野村アセットマネジメントは各社との調整・交渉に努力し、これまで数度の引き下げを実行しています。そして、新聞報道によれば低コストパッシブ商品の人気が継続していること、一物多価への風当たりが厳しくなってきていることなども受け、アセットマネジメントOneや三菱UFJ国際投信も国内株式のTOPIX連動などを中心に、年内に信託報酬を引き下げるそうです。ようやく、高コストのパッシブ商品がiDeCoの商品群から消えてくれそうな気配が感じられます。
企業型DCの商品ラインナップ健全化の動き
2022年10月から企業型DC加入者がiDeCoへの加入も原則できるようになりました。このことによってiDeCoの5.6倍も残高のある企業型での商品ラインナップにも変化が起きつつあります。
どういうことかといいますと、企業型DCとiDeCoに同時加入する社員は、企業型の商品ラインナップとiDeCoに並んでいる商品の両方を目にすることになるので、見比べることになります。そうするとiDeCo商品の方が魅力的であれば「うちの商品ラインナップにもiDeCoで並んでいる○○○○のような商品を入れてください」という声が当然出てきます。出てこなくても企業としては社員に適切な商品を提示する責務を強く意識するようになって、商品を見直す企業が増えているのです。
NPO法人確定拠出年金教育協会で行った「企業型DCの担当者の意識調査 2021」でも「商品ラインナップの見直しをした」と「見直しを検討」を合わせると55.1%と半数を超えていました。 つまり、iDeCoの商品ラインナップが魅力的であることが企業型DCの商品ラインナップをよくしていく一助になっているのです。