今回は金融庁の2022年の「資産運用高度化プログレスレポート」でも取り上げられている確定拠出年金用投資信託の一物多価問題について最新動向と、個人はどう自衛し、付き合っていくかなどについてお話ししたいと思います。
iDeCo商品、信託報酬に最大4倍もの差がある現状
今年、金融庁が2022年の資産運用高度化プログレスレポートで指摘しているように、確定拠出年金の投資信託についてはTOPIXや日経平均といった同じベンチマークに連動するパッシブ運用の投資信託で信託報酬が4倍ぐらい違う商品が平然と提示されているというのが現状です。
これが手取り額にどれくらい影響があるか、40歳の方がiDeCoに加入し25年間、毎月1万円を積み立てした場合で試算してみました。運用益による残高の増加を加味せず保守的に計算をしたとしても、国内株式パッシブの一番安い信託報酬の0.143%であれば25年間で負担する信託報酬額は約8万円ですが、最も高かった0.682%の場合は約36万円です。28万円も徴収される手数料額が異なります。同じ指数に連動するパッシブ(インデックス)ファンドであれば値動きはほぼ同じですから、信託報酬の差と同じだけ手取り額に差がつくということになります。
国内株式以外もパッシブ運用の投資信託でどれくらい違うか、調べてみると表のように他の資産クラスでも大きな差がありました。最近人気の外国株式(先進国)では10倍も差があります。最安にこだわる必要性は全くないと思うのですが、パッシブの場合何倍も違う高コスト商品での資産形成は避けるべきです。
NPO法人確定拠出年金教育協会として運営しているiDeCoに関する情報サイト「iDeCoナビ」では、iDeCoを始めようとする方が誤って高コストのパッシブ(インデックス)投資信託を買ってしまわないように、コスト(信託報酬)やリターンで比較できるコーナーをご用意しています。資産クラスと運用手法(パッシブ・アクティブ)を選んでいただくだけで、iDeCoの運用商品として並んでいる約700本の投資信託の中から同カテゴリー・同運用手法でコスト(信託報酬)の安いものから順に一覧表示し、ワンクリックしていただければその商品を買える運営管理機関も確認できます。
口座管理料が安くても、高コストのパッシブ(インデックス)投資信託を並べている運営管理機関は顧客に誠実に向き合ってサービス提供してくれるのか疑問を感じざるを得ません。中にはまるでひっかけ問題のように、商品ラインナップの中に同じカテゴリーの同じパッシブ(インデックス)運用で高コストのものと低コストのものが混在しているケースもあります。年々商品数が増えて間違いやすい状況になっていますので商品選択の際には、よく注意して選んでください。
運営管理機関には老後資産形成に適した商品を専門的知見をもって厳選して並べていただきたいと切に願うばかりですが、個人としては自衛の策として、どなたでも登録なしで手軽に使える「iDeCoナビ」の「運用管理費用(信託報酬)で比較」のコーナーを活用いただけたらと思います。https://www.dcnenkin.jp/comparison/index.php?mode=trust_fee