従来型の毎月分配型投信に資金がシフト

さて、前置きが長くなったが、本題はここからである。

こうした分配に関するルールがあらかじめ明示されているにもかかわらず、「米国成長株D」の資金流入は6月15日の決算日以降、急減速した。今年初めて0円となった3月15日の決算後はさほど流入ペースが落ちなかったが、5、6月と2カ月連続で0円となり、基準価額が1万円を割ったことがとどめを刺したとみられる。2021年はDコースだけで1兆円弱の資金流入があっただけに、その反動は大きい。

予想分配金提示型の場合、分配金の引き下げは自動的に運用成績の悪化を意味する。「運用成績が悪いから分配は行わない」というのは至極当然なのだが、いざその状況に直面すると、期待していた分配金を受け取れない上に元本も目減りしているという、「泣きっ面に蜂」のような心理状態に陥るのだろう。

また、現存する予想分配金提示型83本のうち、実に63本が株式を主要投資対象(収益の源泉)としている点も見過ごせない。債券やリート(不動産投資信託)より高い分配金を期待できる反面、短期間で大幅な基準価額の下落に見舞われる可能性が高いからだ。

そうした中、足元では予想分配金提示型ではない、従来型の毎月分配型投信が「米国成長株D」に代わり、じわりじわりと人気を集めている。「グロイン」の通称でおなじみの「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型)」が約2年ぶりに月間100億円規模の純流入に転じているほか、「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)」(愛称:「世界のベスト」)や、「東京海上・世界モノポリー戦略株式ファンド(毎月決算型)」などのファンドも流入額が増加している。

これら全てのファンドに共通しているのは、株式を主要投資対象としているということと、いわゆるグロース関連銘柄/セクターに高い比重を置いていないということだ。特に「グロイン」と「世界モノポリー」はディフェンシブセクターの代表格である、電力、通信、エネルギーなどの公益企業の組み入れ比率が高く、類似のグローバル株式ファンドと比べて年初来の運用成績が良好に推移している。

肝心の分配額は、「グロイン」こそ2020年2月以降30円だが、「世界モノポリー」が直近6月決算期で100円、「世界のベスト」も同150円と、相対的に高い。基準価額が安定的に推移していて、かつ100円単位の分配が受け取れるとなれば、こうしたファンドに関心が向くのは自然なことかもしれない。