販売現場に今なお残る「分配売り」の実態
以上を踏まえると、「米国成長株D」も結局は毎月分配というファンドの仕組みと、200~300円という高水準の分配が投資家を惹きつけていたのだと実感する。少々うがった見方をすれば、販売の現場で今もなお、商品性よりも分配金の高さを強調する「分配売り」が続いているのだろう。
商品性に共感し、米国成長株の将来性に期待する投資家が多いなら、年2回決算のBコースにもっと資金シフトが起きても良いはずだし、そもそもDコースにここまで資金流入が偏っていなかっただろう。何より、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」シリーズの足元の調整は商品性に照らし合わせると十分健全な範囲である。長期的な視点で見た場合、今のようなタイミングで年2回決算のBコースの追加購入を検討するのも悪くない。
「分配売り」は、販売会社、運用会社、そして投資家の全員を疲弊させる。特に数百円単位の分配を行う「高分配ファンド」ほど引き下げ時のショックは大きく、類似ファンドへの資金シフトが起こりやすい。約20年にわたり投信業界が繰り返してきたことだ。先述した「世界モノポリー」や「世界のベスト」が今後も残高を積み上げ、定着できるかどうかは、販売会社と運用会社の双方が、商品性にフォーカスした提案をできているかどうかにかかっている。分配金の水準だけで投資家をつなぎ止めるのが難しいということは、過去の経験から十分、分かっていることだ。
投資信託を活用した資産運用では、資産形成のためのファンド選びよりも、作った資産を効率的に使う=取り崩しのプランニングを考えるほうが難しい。十年単位の時間をかけられるなら、身の丈以上のリスクを取ってしまったとしても途中で軌道修正ができる。何より、今は資産形成に適した低コストのインデックスファンドシリーズや、ロボアドバイザーのサービスも豊富に用意されている。
しかし、貯めたもの、増やしてきたものを思い切って「使う」というのは実に勇気のいることで、この部分も含めた包括的なアドバイスを必要とする人はネット証券の顧客にも多い。毎月分配型に一定のニーズが存在することは確かだが、今こそ商品に依存しない、資産活用の提案力を磨くタイミングではないか。予想分配金提示型ファンドを巡る昨今の動きは、投信業界に対して、古くて新しい課題を突き付けている気がする。