政府が統制を強める中国経済の動向に、世界が注目している。新型コロナウイルスの封じ込めを徹底する中国当局の「ゼロコロナ政策」により、広東省深セン市や上海市などの主要都市ではロックダウン(都市封鎖)が実施された。物流をはじめとした幅広い経済活動に影響が広がり、世界のサプライチェーン(物の供給網)は混乱のなかにある。

とくに影響を受けているのが、対中貿易額が10年ぶりに過去最高に達した日本。今回は、ロックダウンが中国経済や日本企業に与える影響を解説する。

港湾も陸路も…厳格な移動制限や検疫で部品・原材料の輸送がストップ

中国のロックダウンが世界経済に与える影響として最も大きいとされるのが、サプライチェーンの乱れだ。

例えばコンテナ取扱量で世界首位の上海港を有し、平時では国際的な物流拠点としての役割を果たしている上海市では、2022年3月末〜5月まで厳格なロックダウンが行われ、現在も一定の規制が続いている※。これにより、荷役効率やコンテナの回転率が低下。沖合で停留する船が急増し、物資の受け入れや海外への輸出が以前より困難な状況となっている。

※編集部注 上海市は6月1日に外出制限を解除したものの、厳格な管理体制は継続され、正常化にはまだ時間がかかると見られている。

港湾機能が麻痺している原因は複数あげられる。まず考えられるのが、港湾労働者の不足だ。新型コロナウイルスの陰性証明がなければ作業員が港に入れないことが大きく影響している。

次に、陸路による港湾への物流が滞っていること。人員不足は港湾労働者だけでなく、トラックの運転手にも発生している。また、中国では地区をまたいで移動するトラック輸送者に対し、PCR検査結果や通行許可証の提示、工程表の遵守を義務づけるといった厳しい規制を実施。上海市を中心とした長江デルタ地域における配送トラックの稼働率は大幅に低下している。地域一帯には商品の製造を担う工業地帯が点在しており、物流停滞によるサプライチェーンへの影響は計り知れない。

商品生産を担う工場も大半が稼働停止に追い込まれている状況だ。原材料の不足に加え、従業員から感染者が出ると、工場への出入りが遮断されてしまう。人・物への徹底的な検疫が必要となり、通常業務はほぼ困難となる。