ユーモアで人々の心をわしづかみした著名人
アメリカのレーガン元大統領は、ユーモアに満ちた人だった。一度、狙撃され病院に担ぎ込まれたことがある。ベッドに横たわったとき、周りの医師たちに「君たちがみんな共和党であることを祈るよ」と冗談を言って周りを爆笑させたそうだ。大統領は共和党員だった。また、会議を始めるとき、みんなをユーモアでドッと笑わせた後、本題に入ったことでも有名だ。
元首相の吉田茂も度々ユーモアを発し、周囲を和ませた。寒い冬の総選挙の街頭演説で、外套を着たまま演説する吉田茂に対し、野次馬が「有権者に失礼だろう、外套(がいとう)ぐらい脱げ」と罵声を浴びせた。これに対し「外套を着てやるから街頭(がいとう)演説なのです」と応え空気は一変、大勢の聴衆が笑いをこらえきれず拍手喝采をしたそうだ。
イギリスが不況に苦しんでいるとき、経済学者のケインズに対して記者団の1人が「長期的に見て、われわれは一体どうなるのでしょうか」と不安げに質問した。経済の長期的予測など即答しようもない状況であり、一瞬返答に躊躇したケインズは、「さよう、長期的に見れば……」と一呼吸おいた後、「さよう、長期的に見れば、われわれはみんな死んでいます」と返した。返答の難しい経済の問題を言葉の範疇に切り替えたケインズに、ユーモアが好きなイギリスの記者たちは大爆笑となった。ただ、ドイツの特派員は、真面目に答えてほしいと息巻いたという後日談が残っている。
例を挙げればキリがないが、新型コロナウイルスやロシアによるウクライナ侵略など、憂鬱なことに事欠かない昨今、時にはジョークを交わして暗雲をみんなで笑い飛ばしたいものだ。グループなど組織の絆が深まり、仕事がはかどるかもしれない。
執筆/大川洋三
慶應義塾大学卒業後、明治生命(現・明治安田生命)に入社。 企業保険制度設計部長等を歴任ののち、2004年から13年間にわたり東北福祉大学の特任教授(証券論等)。確定拠出年金教育協会・研究員。経済ジャーナリスト。著書・訳書に『アメリカを視点にした世界の年金・投資の動向』など。ブログで「アメリカ年金(401k・投資)ウォーク」を連載中。