iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)は、現役世代の皆さまが、原則、毎月一定金額を積み立てて、自分で運用した資産を60歳以降に受け取る制度です。そもそも、2002年1月から始まったこの制度、歴史は長いものの、それこそ長い間、知る人ぞ知る的な存在でした。日の目を見るようになったのは、ちょうど5年前の2017年1月、iDeCoという愛称が決まり、公務員にもiDeCoが解禁されたのです。

今やiDeCoも飛ぶ鳥を落とす勢い、現役世代の資産形成ツールとして、つみたてNISAと双璧をなす存在ですね(言い過ぎでしょうか?)。公務員のiDeCo解禁前夜を知る者としては感慨深く、隔世の感すらありますが、公務員にiDeCoが解禁されて早くも5年が経ちました。でも、まだ5年なので、iDeCoを受け取っている公務員はほとんどいないでしょう。今回は、現状の税制等を踏まえて、公務員の立場からiDeCoの受け取り方を考えてみます。

iDeCoの受け取り方は、一時金が定説! その理由は

iDeCoの受け取り方は大きく分けると、一時金として一回で受け取る、または年金として数年かけて受け取る、この2パターンです。厚生労働省の資料※1によれば、89%が一時金で受け取っています。つまり、「iDeCoの受け取りは一時金で!」が定説であり、その理由は一時金と年金で税制が異なるからです。

※1 出所:厚生労働省 社会保障審議会 企業年金・個人年金部会「DCの拠出限度額の見直しについて」(2020年12月23日)

まずiDeCoを一時金で受け取ると、退職所得と同じ扱いになります。

退職所得の税金は、退職金から「退職所得控除」を差し引いて、さらに1/2を掛けて、それから税率を掛けて計算します。その「退職所得控除」は勤続年数で決まります(iDeCoは積立期間を勤続年数とみなします)。勤続20年までは年40万円ずつ、勤続21年以降は年70万円ずつ、「退職所得控除」が積み上がります。

例えば、22歳で大学を卒業し60歳まで働くと、勤続年数は38年です。「退職所得控除」は、年40万円×20年 + 年70万円×(38年-20年)で2060万円になります。仮に退職金が2000万円だと、「退職所得控除」の2060万円を差し引くとマイナスになるので税金はかかりません。退職金がもっと多くて2500万円だと、2060万円を差し引いてもプラスですが、それを半分にしてから税率を掛けるので税金はかなり少なくなります。退職金の扱いが、税制上、とても優遇されていることが分かりますね。

一方、iDeCoを年金で受け取ると、公的年金と合わせて雑所得になります。

雑所得の税金は、公的年金等の収入額から「公的年金等控除」を差し引いて、他の所得と合算して計算します。そして、「公的年金等控除」は年齢と収入額で決まります。収入額に応じて決まるので、退職所得のように控除を差し引いたらマイナスになる、なんてことはありません。また、税金がかからない水準は、年収が1000万円以下の場合、公的年金等の収入額が65歳未満で年60万円まで、65歳以上で年110万円まで。特に、65歳から公的年金と一緒にiDeCoを年金で受け取ると、税金がかかるケースが多くなるでしょう。

このように、「退職所得控除」と「公的年金等控除」を比較して、税金がかからないように受け取ろうとすると、一時金のほうが年金よりも税制上有利と考え、「iDeCoの受け取りは一時金で!」が定説になっているのです。