では、具体的にどうしたらよいのか?

話が少し大きくなりすぎてしまいましたので、本題に戻りましょう。ここまでの話を踏まえたうえで、認知症発症後も資産を適切に管理しつつ、長生きやインフレ・リスクに対処するにはどのような方法があるのでしょうか?

まず、信託の仕組みを利用して、このような状況を回避できるのが家族信託です。一般的には親が委託者兼受益者、子供が受託者になり、事実上、親の資産の管理・処分を子供が行う仕組みになります。これを親が認知症になる前に締結しておくことで、認知症発症後は子供が財産を管理することになります。老人ホームなどへの支払いもできますし、必要に応じて新たな収益物件に投資したり、金融資産を購入したりすることも可能になります。

これにより、支払いなどの問題は解決されますが、依然として残る問題は「長生きやインフレ・リスクに対処するためには具体的に何をすればよいのか」ということ。適度なリスクでインフレに負けない運用をするには高度なノウハウが求められるため、このようなことをお金のプロに任せる方法も一考に値するでしょう。

プロを活用する方法としては2つあります。1つは、市場環境や年齢に合わせて自動的にリスク管理をしてくれるタイプの投資信託を活用すること、もう1つはIFAと呼ばれる独立系の金融アドバイザーなどを活用する方法です。ただし、IFAにはスキルの格差があり、市場の話はできても、このようなライフサイクルを踏まえたアドバイスが不得意な場合もあります。アドバイザーを選定する際には、しっかりと得意分野を見極める必要があるでしょう。