認知症が資産管理・資産運用に与える影響とは?
初めに、資産管理の観点から見ていきましょう。認知症になると、まず預貯金が凍結されてしまいます。実はこれが一番やっかいです。法定後見人がつけば、彼らを通じてお金の引き出しができると言われていますが、実際には、後見人は受託者の資産を守ることが役割であるため、金融機関は容易に引き出しに応じてくれないようです。
結果として、老人ホームの費用や病院の費用などは親の資産から払うことができず、いったん子供たちが立て替える必要があります。通常、親がこのような問題に差し掛かる時期は子供の教育費がかさむ時期であることが多く、多額の立て替えをするのは非常に厳しいと考えられます。
次に、認知症と資産運用の関係性について見ていきましょう。認知症になると、預貯金のみならず株式や投資信託等の運用資産や不動産も凍結されてしまいます。この状態になると、新たな投資はもちろん、既存の資産運用を手仕舞うことすらできなくなります。仮に認知症になる前の段階で、リスクを承知のうえで株式の個別銘柄に投資していたとしても、その株式の売却は難しく、リスクを取ったままの状態が継続されることになります。
また、資産運用については、実は認知症が発症する前から問題が起きています。なぜなら、人間の認知能力は50代半ばをピークに低下していくと言われているからです。実際、60歳以上の方の運用リターンは、勤労世代と比べて相対的に劣ったリターンになってしまっているという研究結果もあります。
この背景には、高齢者は知識・経験があるがゆえに自信過剰になってしまい、結果として必要以上に高いリスクを取ってしまうことなどが考えられます。今や、この自信過剰やそこからくる頑固さは、地域コミュニティなどでも問題になっています。中には“老害”と言われることもあるようですが、このスタンスは地域の人々に迷惑をかけるのみならず、自分自身の資産運用にも悪影響を及ぼしているのです。