インデックスファンドの選び方の第3回として、今回は、インデックスファンド選びの2つ目のステップであるインデックスファンドの運用実績の測り方についてお話しします。前回(インデックスファンドの選び方2)をお読みいただいた方の中には、「運用実績の大部分が決まるベンチマークを選んでしまえば、あとはそのベンチマークに連動するものからコストの一番安いものを選べば良い」と思われる方も多いかもしれません。
確かにその2つの要素は大変重要ですが、他の理由でもインデックスファンドの運用成績に差がつくことがあります。しかも、以前お話ししましたアクティブファンドとは異なり、インデックスファンドの性能の優劣は過去の実績でおおよそ見極めることができます。
インデックスファンドの運用成績ではないリターンの大きさ
インデックスファンドの優劣はベンチマークとの“ズレ”で判定
最近人気が高まっているインデックスファンドに関しては、多くの情報が発信されています。しかしながら、インデックスファンドの優劣を“過去のリターンの大小”で議論されることが多いことに筆者は違和感をもっています。理由は、過去のリターンの大きさでは、以前お話ししたアクティブファンドのケースとは異なる理由で、インデックスファンドの実力を判定することはできないからです。
本稿でも以前からお話ししていますように、インデックスファンドの運用目標はできるだけ高いリターンを挙げることではありません。あくまでもベンチマークである市場指数に連動させてできる限り近いリターンを挙げることです。ベンチマーク自体がマイナスのリターンとなった場合には、インデックスファンドも同じだけマイナスにしなければならないわけです。従って、その成果は、リターンの大きさではなく、いかにベンチマークに上手く連動させたか、言い換えればどれだけベンチマークとの“ズレ”あるいは意図しないリターン差(誤差)を小さくできたかで測るべきでしょう。
誤差の大きさはリスクの大きさ
しかしながら、過去にベンチマークに上手く連動させたインデックスファンドは今後も同様に連動させてくれる可能性が高いのでしょうか? なぜ誤差が小さいインデックスファンドの方が投資成果に貢献できるのでしょうか? これらをご説明するために、まずインデックスファンドの運用手法とベンチマークとの誤差がどうして生じるのかをお話ししたいと思います。
インデックスファンドは、ベンチマークにできる限り連動させるために、基本的にベンチマークの銘柄と組入比率通りにポートフォリオを構築します。しかしながら、債券のようにベンチマークの全銘柄に投資ができず一部の銘柄でベンチマークに似たポートフォリオを構築する場合(注1)や、ベンチマーク自体が採用銘柄を変更し入れ替えする場合、組入証券の売買とベンチマークの為替レートを含む時価評価のタイミングが異なる場合、あるいはポートフォリオ内に現金が残った場合等に、ファンドとベンチマークのリターンに誤差が生じることがあります。
(注1)債券のインデックスには過去に発行され未だ償還されていない銘柄も全て含まれますが、償還が近づいた債券が償還前に売却されることはほとんどないため、どうしても一部の銘柄には投資できずベンチマークと全く同じポートフォリオが作れない場合があります。その際には、投資できる銘柄のみでベンチマークに近い特性(例:残存期間の構成や利払い水準など)を有するポートフォリオを構築します。
しかしながら、組入証券の売買とその管理を緻密に行うことで、その誤差は小さくすることができます。求められるのは投資判断の成否ではなく管理能力あるいは技術の高さです。過去に大きな誤差が生じたファンドは、今後の管理能力にも不安を残します。したがって、過去の誤差の大きさから、将来誤差が生じる確率やその場合の誤差の大きさを推測することができるでしょう。つまり、過去の誤差の実績から、今後のインデックスファンドの運用力を根拠を持って評価することができるわけです。