チャンスを十分活用できているか? 若い世代の現実
私は現在に至るまで、企業型DCを導入している企業様を通じて、在籍する従業員の皆さんの運用実態を見ていますが、若い世代(20代・30代)の加入者のうち、一体どの位の方がそのチャンスをしっかり掴んでいるでしょうか? 企業型DCに加入している若い世代の加入者の皆さんを例に見てみると、元本確保型商品を選択・運用しているケースが圧倒的に多いです。元本確保型商品とは、文字通り積み立てた元本が確保される商品で、代表的なものだと定期預金や保険がそれに該当しますが、この元本確保型商品を選択している若い世代の加入者が驚くほど存在します。
前のトピックと前回のコラムを読んでいただいた皆さんはおわかりだと思いますが、元本確保型商品を選択することは、利益を出すことが出来ない、いわばタンス貯金と同じです。この若い世代の運用実態は、管轄する厚生労働省や制度を導入する企業はじめ、DC業界全体において大きな課題となっており、それを改善するために投資教育を実施するのですが、運用に対する抵抗感や苦手意識、運用でお金が減ると思い込んでしまっている方のマインドを100%変えることが残念ながら実現出来ていないのも現実です。
お金に対する解釈は人それぞれですし、たとえ若い世代の加入者であっても、その運用が100%悪いとは言えません。しかしDCという制度をしっかり活用いただくという点で見ると、その運用を若い世代から行ってしまっていることは、せっかくのチャンスを自ら放棄してしまっていると言わざるを得ません。
『貯金は貯めること、運用は増やすこと』。この違いを若い世代の加入者の皆さんには早く気づいてもらい、ご自分の今の運用を見直していただきたいと思います。
個人責任で運用する時代へ加速─2022年に控える法改正
2021年は、日本において確定拠出年金法施行から丸20年という節目の年でした。施行当初にDC運用していた当時20代だった加入者は40代に、40代だった加入者はちょうど定年を迎え、まさに自分で運用した年金を受給している頃だと思います。
以前のコラムで申し上げましたが、国内企業の退職金制度において2021年3月末時点のDC加入者は延べ約941万人となり、企業が運用する確定給付年金を初めて上回りました。また今年(2022年)は確定拠出年金法の一部改正が行われます。今回の改正では、加入年齢引き上げや受給開始年齢の引き上げ、そして加入制限の緩和が大きなポイントとなっています。この改正に関する詳細は別のコラムでお話しますが、こうした年金制度を取り巻く環境変化は『年金づくりは個人自らの責任で運用することが当たり前』という時代に本格移行したと言えると思います。
今後も企業型DCを導入する企業や、来年の緩和をキッカケにDC運用を開始する人がより一層増加することが予想されており、各金融機関も新規加入者向けに魅力的な商品サービスを提供しようと準備・発売してきています。こうした“風が吹いてきている”DCの渦中にいるのが、まさに皆さんです。これだけ加入者が増加しているという事実を客観的に見れば、皆さん一人ひとりが自分の年金を少しでも増やしたいと考えているからであり、自分の年金を守ろうという意識がより一層強くなっている証だと言えます。若い世代の加入者の皆さんには、お話した内容をご理解いただき、この“風”に上手に乗ってください。今年が皆さんにとって良い一年となることを願っています。