トヨタなど大手企業の時価総額を超え急成長する暗号資産も

ところで、ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産は、暗号資産取引所で売買されているのをご存じでしょうか。暗号資産取引所は現在、世界中に数百という数があるとされ、正直なところすべての実態を把握するのは困難です。日本には現在、コインチェックやビットフライヤーなど10を超える暗号資産取引所が存在しています。

ビットコインやイーサリアムなどの暗号資産は、ほぼ法定通貨に近い流動性を持っています。米ドルやユーロ、円などの法定通貨と交換できる価値を持っているだけでなく、これらの暗号資産を使って、モノやサービスを購入した時の決済に、これらの暗号資産をあてることができます。

一方、第一生命経済研究所のレポートで柏村主席研究員が言及しているのは、暗号資産取引所自体が発行する暗号資産「取引所仮想通貨」で、その取引所で暗号資産を売買している顧客向けに、暗号資産取引所が自ら発行するものです。この取引所仮想通貨の時価総額が、今や物凄い勢いで増えているそうです。

このレポートでは、大手暗号資産取引所である「BINANCE(バイナンス)」が発行している取引所仮想通貨「Binance Coin」について取り上げられています。その時価総額は、12月上旬時点で10兆5476億円にもなっています。

ちなみに、暗号資産のなかでは一番時価総額が大きいビットコインは、103兆8433億円にもなりますから、すでに日本国内最大手のトヨタ自動車の3倍以上の時価総額になっています。それだけ、暗号資産が広く認知されるようになってきた証といっても過言ではありません。

レポートによると、取引所仮想通貨は、もともとその取引所で暗号資産を売買する顧客の取引手数料を安くするために導入されたそうです。ところが今は取引手数料の割引特典だけでなく、買い物や旅行、航空券などの商品やサービスの購入にあてることも可能になってきたと指摘しています。

数字が大きすぎてよく分からないかも知れませんが、たとえば日本の上場企業で言うと、トヨタ自動車の時価総額が32兆6626億円(12月13日時点)です。またNTTが11兆2608億円(同)ですから、それにほぼ匹敵するだけの時価総額を、Binance Coinは持っていることになります。

それだけの規模を持っている取引所仮想通貨が、モノやサービスを購入する際の決済通貨として使える機会が増え、さらに暗号資産取引所間の競争で、各取引所が魅力的な特典を付与した取引所仮想通貨を次々に発行するようになったら、暗号資産と法定通貨の距離が、どんどん縮んでいく可能性も十分に考えられます。