ファンド選定の決め手にしてはならない過去の運用実績

今回は、アクティブファンドの選定で重要視される傾向にある運用実績が、実は頼りになる指標ではないことを、実際の分析事例を見ながらご説明しました。日常生活においても、過去の実績が将来の成績に繋がらない事例は沢山あるのではないでしょうか。

あるスポーツ選手が今年素晴らしい成績を残したとしても、それだけでは来年も良好な成績を挙げられるかどうかはわかりません。株式投資でも、投資する銘柄を、過去の株価の動きや業績の良否のみで決定することは考えられません。銀行も企業への融資の可否を判断する際には、過去の決算書だけで決定することはないそうです。

一方で、投資信託に関しては、必要以上に過去実績が重視される傾向があることには注意する必要があります。過去の優れたパフォーマンスを理由に、あるアクティブファンドに注目することは決して誤りではないと考えます。しかしながら、高パフォーマンスだけを理由にそのファンドへの投資を決定するべきではありません。過去に優れたパフォーマンスを挙げたファンドを選んでも、未来に優れた成績を挙げることができる確率が高まるわけではないからです。

“投資信託のプロ”が運用成績を最大の理由にしてファンドを推奨している場合には、その“プロ”の意見には耳を傾ける必要はないでしょう。また、昨今では良好な運用成績を挙げたファンドが表彰されるケースも増えています。こうした過去実績による受賞は、運用会社や運用者そして誰よりも既に投資されている受益者の方々にとっては重要な情報であり、喜ぶべきニュースです。しかし、これからファンド選定を行う方々にとっては、過去実績のみに基づく受賞は、重要視すべき情報とは考えられません。

投資信託の目論見書などの開示資料には、例外なく「ファンドの運用実績はあくまでも過去の実績であり、将来の運用成果を約束するものではありません」という主旨の文章が記載されています。これは責任回避のための所謂“ヘッジ文言”と一般的には考えられていますが、むしろ過去の実績と将来の成績は本当に無関係であるから記載されているとも解釈できるのではないでしょうか。

それでは、過去の運用成績があてにならない以上、何を決め手にすれば“優れた”アクティブファンドを選ぶことができるのでしょうか。次回は、選定を成功させるために重視すべきポイントについてお話しします。