“相談者にとっての”老後資金不足額はいくらか

すると、老後の年金は月25万円、支出は27万円ということが分かります。

毎月2万円の赤字です。 65歳から毎月2万円不足する生活が何年続くでしょうか。これは、寿命が何歳かということを意味しますが、こればかりは誰にも分かりませんから、仮に95歳まで30年間続くと仮定しましょう。

すると2万円(不足額)× 12ヶ月× 30年(65歳〜95歳)+300万(リフォーム費用) = 1020万円となり、老後の不足額は1020万円だと分かりますね。美奈子さんにとっては、“2000万円もいらない”ということです。

しかし、1020万円が必要なことは変わりません。これから1020万円をどうやって作っていけば良いでしょうか。現在、美奈子さんはiDeCoをされています。残高は50万円で毎月3万円を積み立てていますから、60歳になる頃には単純計算で700万円になります(50万円+3万円×12カ月×18年)。しかし、必要額は1020万円。あと300万円ほど足りません(なお、ここでは預金の600万円は老後を迎えるまでの必要な生活防衛費として、カウントには入れないようにしています)。

美奈子さんは、和弘さんもiDeCoを始めた方が良いのかという疑問もお持ちですが、和弘さんのiDeCoで、この300万円を埋められるなら埋めたいところです。

あるいは、美奈子さんご自身のiDeCoの掛金をアップする方法もあります。積立における税金面では、収入の多い和弘さんが、iDeCoを始めたほうが節税にはなりますが、美奈子さんご自身の名義で老後資産を増やしたいのであれば、美奈子さんの掛金をアップする方法もあるでしょう。

ちなみに、"お勤めの会社に企業年金のない”会社員である和弘さんの場合、iDeCoの掛け金上限は月2.3 万円です。60歳まであと15年ですから2.3 万円×12ヵ月× 15年=414万円となり目標額を達成できそうです。

その場合、問題が発生します。月2.3 万円を拠出する財源が美奈子さんの家計にはないのです。現在、月1万円貯蓄をしていますが、これを60歳まで引き出しができないiDeCoに入れてしまうのは危険です。

家計を見直すとしたら、通信費がおすすめです。格安スマホや割引プランなどを検討し、通信費を月1万円位にできると、浮いた月約1万円をiDeCoに回すことも可能になってくるでしょう。しかし、1万円×12ヵ月× 15年=180万円ですから300万円を満たせません。足りない分は、ボーナスで補う必要がありそうです。あるいは、2022年からは、会社員は65歳までiDeCoの積み立てができるようになりますので、積立期間を伸ばすという方法もあります。

なお、参考までにお伝えすると、毎月1万円を積立して15年後に300万円になる利回りは約6%、毎月1.3万円の積立なら約3%です。ポートフォリオを考える際に参考にしてください。

不足額を知ると資産形成がラクに

今回、老後のためには2000万円本当に必要なのか、どのように資産形成すればいいかという相談をいただきましたが、美奈子さんの予想より不足額は少ない金額でした。このように老後生活の基盤となる年金をしっかり理解し、ねんきん定期便をチェックすることは非常に重要です。

美奈子さんは、"自分たちにとって必要な老後資金額”を知ることができ、2000万円という数字にとらわれなくていいと分かり、すっきりされることと思います。

具体的な金額さえ分かれば、家計の見直しも資産形成も頑張ろう、という気持ちになる方は多いものです。40代前半という比較的早めの時期に老後資産形成に向けて、運用をスタートされていることは非常に良いことです。これからも頑張ってください!

まとめ

●老後資金の必要額を知るには、一にも二にも年金の確認から
●老後資金の必要額は必ずしも“2000万円”ではない
●iDeCoに回す資金を作るべく、家計の見直しを(おすすめは通信費)