Topic 3:人と同じではない、運用ゴールは自分のため
加入者の皆さんがDC運用する目的は前述の通り、将来受け取る自分の年金を自分で形成することであるとお伝えしました。しかしこのDCは、将来自分が受け取る年金の額がある程度予測ができる確定給付年金とは異なり、運用如何によって将来受け取ることができる金額に大きな差が生じる可能性があります。
その差が生じる要因のひとつとして、加入者各人の金融リテラシーの差が挙げられます。金融リテラシーとは、金融に関する知識や情報を正しく理解して自らが自主的に判断できる能力を言いますが、それを短期間で身につけることは、これまで運用未経験であったり、DCに苦手意識をもっている加入者にとって決して容易なことではありません。
ここでは、これまでの長きにわたり年金運用やDC運用に携わった経験を踏まえ、最低限意識しておいていただきたい金融リテラシー向上に向けたアイデアをお伝えできればと思いますが、DC運用は他の誰かがやってくれるのではなく、あくまで加入者自身がDC運用に関心を持ち、運用のゴールは自分のためであるということを決して忘れないことがとても大切です。
加入者である以上、運用に必要な最終的な判断はすべて加入者自身で行う必要があります。その運用結果や成果は、金融リテラシーの優劣が比較されるものでもありませんし、ルールのあるゲームの勝ち負けのように他人が判断するものではなく、判断するのはあくまでも自分自身です。ゴールをしっかり見据え、自分に合った運用を始めることができれば、それは金融リテラシー向上の大きな一歩となります。自分の年金を運用するためのハンドルを決して離さないことが大切だということを忘れないでください。
Topic 4:すべては正しい情報を知ることから始まる
現在、DCやiDeCoに関する情報はインターネットやSNSをはじめ、多くのメディアで得ることができますが、加入者の皆さんが欲しい情報とは大きく分けて『運用に関する基礎知識』と『運用で失敗しないための具体的な運用方法』の2つだと思われます。しかし、巷に溢れる膨大な情報のすべてが正しい情報であるとは限りませんし、運用についてよくわからない加入者にとって、本当に自分に必要な情報か否かの判断には、決して小さくない困難を伴うと思われます。
企業型DCを運用している加入者であれば、『運用に関する基礎知識』を正確かつ汎用的な情報として入手できるのが、事業主が加入者に提供する「継続投資教育」です。一方iDeCoの加入者の場合は、自分で情報を探さなければなりませんが、ご自身で選択された運営管理機関の中には加入者に向けて提供されるWEBサイトやガイドブック等があるので、それを参照することで基本的な情報は十分に入手できます。
次に『運用で失敗しないための具体的な運用方法』は加入者なら誰でも知りたい情報でしょう。ここで非常に危険なのは、運用を十分に理解していない加入者が「失敗が怖い、損をしたくない」という気持ちから、不確実な情報を鵜呑みにした結果、してはならない誤った行動をしてしまうことです。
DC運用とは、将来受け取る自分の年金を自分で形成するための行動です。各種情報を自分で積極的に学習、活用することは金融リテラシーを向上させるために非常に有効ですが、その情報が自分にとって本当に必要かどうか、正しい情報か否かを精査する能力を身につけることが肝要です。そのためにはまず基本的な考え方を身に着けることが大切になります。
これまでDC運用についてよくわからないという方に、これからこのコラムを読んでいただき、少しでも運用に前向きな思考となっていただけるような情報やアイデアをお伝えしてまいります。