finasee Pro(フィナシープロ)
新規登録
ログイン
新着 人気 特集・連載 リテール&ウェルス 有価証券運用 金融機関経営 ビジネス動画 サーベイレポート
永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

【文月つむぎ】私が相場の先行きを悲観しない究極の理由

文月つむぎ
文月つむぎ
2025.04.16
会員限定
【文月つむぎ】私が相場の先行きを悲観しない究極の理由

全てトランプのせいだ⁈

4月に入り、トランプ関税に世界中が右往左往している。米国は厳格な三権分立制度の下、行政、立法、司法の権限が完全に分離しており、行政府の長である大統領は議会に対して責任を負うことなく大統領としての職務を遂行できるものの、立法に関する権限はなく、議会が作った法律に従って行政権を行使する。また、大統領には予算の提出権がなく、予算教書にて要望を議会に告げることが出来るが、実際の予算に関する権限は議会が握っている。こうした仕組みが備わっているはずなのだが、なぜ大統領が関税といった重要施策をいとも簡単に自由自在に操れるのだろうか。確かに、上院も下院も共和党が多数を占める「トリプルレッド」状態であり、共和党のイニシアチブが実現しやすい状況ではあるが、米国の議員には党議拘束がない。次々と発動される過激な大統領令が真に米国民の益になっているのか、冷静な目で評価する共和党議員もいるのではないか。独裁国家のように見える現状が腑に落ちないのは筆者だけではないだろう。

今回のトランプショックは、米国においてトリプル安(株安、債券安、為替安)を生じさせており、昨年以降、NISA制度を使って米国個別株や「オルカン」、「S&P500」といった売れ筋投信を購入してきた投資家の多くが含み損を抱えているものと思われる。投資経験の浅い投資家の方々は、市場変動の激しさに身震いしているのではないか。昨年8月にも株価が急落した局面があったが、一時的な市場流動性の低下が要因であったこともあり、その後の株価回復が早く様子見に徹した投資家が多かったと聞くが、今回の市場変動は、世界的な景気減速を引き起こすものであり、株価のさらなる下落や長期低迷、大幅な為替調整、スタグフレーションを懸念する声も大きくなりつつあり、投資行動を見直すべきか悩んでいる投資家は少なくないものと思われる。

こうした中、足元で大手ネット証券の投資信託の売れ筋に変化がみられる。昨年は年間を通し、海外株式投信が上位をほぼ独占していたが、4月には、積立設定件数などで金価格に連動する投資信託がいくつか上位に挙がってきた。従来、国内ETFでは純金上場信託が上位に入っていたが、いよいよ投資信託でも上位に食い込み始めている。なお、世界的に「有事の金」買いが見られており、結果として、金価格は(ドルベース・円ベースともに)史上最高値更新を続けている。ちなみに、「デジタルゴールド」と言われる暗号資産は、今年1月に史上最高値を付けたあと、2月に大規模なハッキング事件が発生したこともあり下降トレンドに入っており、残念ながらトランプ関税騒動にあっても「有事に強い暗号資産」の本領を発揮できていない。ただし、株式市場のようにドスンとした下落が見られないのは、オルタナティブ投資への期待感があるからかもしれない。

不安な投資家の皆さまに伺いたい「究極の問い」

こうした投資対象の見直しは投資経験をある程度積んだ投資家の行動かと思われる。景気の先行きが不透明さを増し、含み損が膨らむ可能性が高まる中、投資初心者の多くは「ここは一旦投資を中断すべきか、あるいは投資から完全に撤退すべきか」と悩んでいるのではないか。今のところ、証券業界からは投資の中断・撤退に至る投資家が急増しているとの話は聞こえてこない。それは業界を挙げて、長期・積立・分散投資の重要性を説き、投資家に冷静な行動を促している効果が出ているからだと思われるが、さらに株価が急落する、あるいは、ドル安が急激に進むなどといった局面では、ギブアップを真剣に考える投資家が増えてくるに違いない。

そうした投資家には、是非こう問いかけてほしい。「世界はこれ以上成長していかないのでしょうか」、と。もし筆者が、「あなたの答えは?」と聞かれれば、プラザ合意、ブラックマンデー、ITバブル崩壊、リーマン・ショック、コロナ・ショック、バーナンキ・ショック等々、社会人になって以降、大規模な株価下落や為替・金利変動を何度も経験してきた者として、自信をもって「一時的に低迷しても、それを乗り越え世界は成長していくと思いますよ。目先の動きを見て投資をギブアップするなんて、もったいない話です」と答えるだろう。今回も時が来れば元の成長路線に戻るはずだと信じている。また、積立投資においては、特に投資を開始してから間もない時期に下落局面をしばらく経験すると、その後の回復局面では、果実が大きく膨らむことは金融教育の場で語られるところだ。なお、生活資金を投資に回していると、含み損の痛みは相当なものとなる。時間を味方につけ、しばしの含み損に耐えるためには、投資を余裕資金で行うことが前提となる。

こうした中、足元の市場急変動を受け、国会においても「資産運用立国の流れに水を差すのではないか」と心配する声が出始めている。加藤金融担当大臣や金融庁幹部は、「資産運用立国の推進に当たっては、価格があるものについては上がったり下がったりするという中で、積み立てて長期的に運用していくということが、結果的に資産運用としては適切ではないかということを金融経済教育の中で、これからも繰り返し申し上げていきたい」と答えている。GPIFの運用成績の公表時にも見られるのだが、メディアや野党の先生方は、運用成績が好調な時はスルーするが、市場が急落し、GPIFが大きな含み損を計上すると、「運用を見直すべきだ」との声が上がる。長期分散投資の世界において、一時的な不調はつきものであり、あまり気にする必要がないことは、2001年に市場運用を開始して以降の収益率が+4.4%(年平均)、累積収益額で+168兆円(2024年度第3四半期まで)という素晴らしい成績を誇るGPIFが教えてくれている。

 

全てトランプのせいだ⁈

4月に入り、トランプ関税に世界中が右往左往している。米国は厳格な三権分立制度の下、行政、立法、司法の権限が完全に分離しており、行政府の長である大統領は議会に対して責任を負うことなく大統領としての職務を遂行できるものの、立法に関する権限はなく、議会が作った法律に従って行政権を行使する。また、大統領には予算の提出権がなく、予算教書にて要望を議会に告げることが出来るが、実際の予算に関する権限は議会が握っている。こうした仕組みが備わっているはずなのだが、なぜ大統領が関税といった重要施策をいとも簡単に自由自在に操れるのだろうか。確かに、上院も下院も共和党が多数を占める「トリプルレッド」状態であり、共和党のイニシアチブが実現しやすい状況ではあるが、米国の議員には党議拘束がない。次々と発動される過激な大統領令が真に米国民の益になっているのか、冷静な目で評価する共和党議員もいるのではないか。独裁国家のように見える現状が腑に落ちないのは筆者だけではないだろう。

続きを読むには…
この記事は会員限定です
会員登録がお済みの方ログイン
ご登録いただくと、オリジナルコンテンツを無料でご覧いただけます。
投資信託販売会社様(無料)はこちら
上記以外の企業様(有料)はこちら
※会員登録は、金融業界(銀行、証券、信金、IFA法人、保険代理店)にお勤めの方を対象にしております。
法人会員とは別に、個人で登録する読者モニター会員を募集しています。 読者モニター会員の登録はこちら
※投資信託の販売に携わる会社にお勤めの方に限定しております。
モニター会員は、投資信託の販売に携わる企業にお勤めで、以下にご協力いただける方を対象としております。
・モニター向けアンケートへの回答
・運用会社ブランドインテグレーション評価調査の回答
・その他各種アンケートへの回答協力
1
前の記事
【文月つむぎ】「NISAは現役世代向け」という誤解 シニア層への普及を急ぐべき政治的背景とは
2025.03.11
次の記事
【文月つむぎ】毎月分配型のアウト/セーフは?当局に問われる「線引き力」
2025.05.07

この連載の記事一覧

永田町・霞が関ウォッチャーのひとり言

【文月つむぎ】運用立国議連の新「緊急提言」を読み解く!NISA、税制の見直しで対応が求められる3つのポイント

2025.12.04

【文月つむぎ】証券口座乗っ取り被害ゼロへ 金融庁の新監督指針を読み解く

2025.11.07

【文月つむぎ】片山さつき新大臣に贈る言葉

2025.10.28

【文月つむぎ】統合・再編議論の先は? 金融庁WGが照らす地域金融機関の未来

2025.10.20

【文月つむぎ】発足はいつ?高市政権下での金融機関の役割

2025.10.10

【文月つむぎ】日証協の「個人投資家意識調査」を熟読すべし 新規投資家層の早期失望に備えよ

2025.10.06

【文月つむぎ】iDeCoがんばれ、NISAに負けるな! 
現状打破へ「7つの提言」

2025.09.22

【文月つむぎ】NISA拡充策の議論が本格化、押さえておきたい3つのポイント

2025.09.12

【文月つむぎ】投資初心者を狙う「フィンフルエンサー」の脅威に備えよ 法規制があいまいな「グレーゾーン助言」の実態

2025.08.29

【文月つむぎ】"フィーベース信仰"に一石? IFA団体が世に問う「顧客本位の新常識」とは

2025.08.05

おすすめの記事

こんな議論してたっけ!?資金交付制度だけじゃなかった、地域金融力WG報告書案で飛び出した注目ポイント3選

川辺 和将

マネックス証券の売れ筋で国内株は「ブル型」で強気、「純金ファンド」がトップ10から消える

finasee Pro 編集部

「誰も取り残さない」を理念に企業型確定拠出年金を運営―電通総研ITがアプリを活用して実践した効果的な施策とは?

finasee Pro 編集部

【運用会社ランキングVol.4】野村アセットマネジメントが2年連続トップ、3位に急浮上したのは大和アセットマネジメント/ゆうちょ銀行・郵便局編

finasee Pro 編集部

楽天証券の売れ筋で「オルカン」がトップに。米国市場への警戒感を背景に「世界のベスト」もランクイン

finasee Pro 編集部

著者情報

文月つむぎ
ふづきつむぎ
民官双方の立場より、長らく資産運用業界をウォッチ。現在、これまでの人脈・経験を生かし、個人の安定的な資産形成に向けた政府・当局や金融機関の取組みについて幅広く情報を収集・分析、コラム執筆などを通し、意見を具申。
続きを読む
この著者の記事一覧はこちら

アクセスランキング

24時間
週間
月間
【運用会社ランキングVol.4】野村アセットマネジメントが2年連続トップ、3位に急浮上したのは大和アセットマネジメント/ゆうちょ銀行・郵便局編
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
マネックス証券の売れ筋で国内株は「ブル型」で強気、「純金ファンド」がトップ10から消える
こんな議論してたっけ!?資金交付制度だけじゃなかった、地域金融力WG報告書案で飛び出した注目ポイント3選
「中途半端は許されない」不退転の覚悟で挑むリテール分野への新たなるチャレンジ case of 三菱UFJフィナンシャル・グループ
「支店長! お客さまへ良い提案をするためのコンサルティング能力はどうやって向上させればいいですか。何に関心を持つべきでしょう」
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
企業型確定拠出年金の制度運営に中小企業ならではの距離感を活かす―新宮運送が構築した“一人ひとりに寄り添う”サポートの形
【プロはこう見る!投資信託の動向】
NISAに必要か?「毎月分配型」「債券メイン」ファンド、「特定の年齢層対象の制度」
新たな商品・制度の導入は、投資家のリスク許容度・理解度が鍵
【運用会社ランキングVol.3/販売会社一般編②】販社からの評価を高める「野村」の底力と「フィデリティ」の運用力、2年連続で総合トップの「アモーヴァ」は安泰か
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
「中途半端は許されない」不退転の覚悟で挑むリテール分野への新たなるチャレンジ case of 三菱UFJフィナンシャル・グループ
【プロはこう見る!投資信託の動向】
NISAに必要か?「毎月分配型」「債券メイン」ファンド、「特定の年齢層対象の制度」
新たな商品・制度の導入は、投資家のリスク許容度・理解度が鍵
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
【運用会社ランキングVol.4】野村アセットマネジメントが2年連続トップ、3位に急浮上したのは大和アセットマネジメント/ゆうちょ銀行・郵便局編
J. フロント リテイリングに聞く企業型確定拠出年金制度運営の秘訣―継続投資教育の参加率が驚異の80%超えの理由とは?
「支店長! お客さまへ良い提案をするためのコンサルティング能力はどうやって向上させればいいですか。何に関心を持つべきでしょう」
第16回 資産運用にまつわるさまざまな常識を疑え!【総集編】
「資産運用において疑うべき常識」を振り返る
SBI証券で再び米国大型テック株への関心高まる、新設「メガ10インデックス」もランクイン
【運用会社ランキングVol.3/販売会社一般編②】販社からの評価を高める「野村」の底力と「フィデリティ」の運用力、2年連続で総合トップの「アモーヴァ」は安泰か
【金融風土記】東日本大震災からまもなく15年、福島の金融勢力図を読む
経営、本部、販売現場が価値観を共有し「真のコンサルティング営業」の実践へ case of ちゅうぎんフィナンシャルグループ/中国銀行
【プロはこう見る!投資信託の動向】
NISAに必要か?「毎月分配型」「債券メイン」ファンド、「特定の年齢層対象の制度」
新たな商品・制度の導入は、投資家のリスク許容度・理解度が鍵
【運用会社ランキングVol.1】販売会社が運用会社に求めるものは、運用力か人的支援か? 2025年の評価を発表!
【連載】こたえてください森脇さん
⑪預かり資産業務に対するマネジメント層の理解が低い
「中途半端は許されない」不退転の覚悟で挑むリテール分野への新たなるチャレンジ case of 三菱UFJフィナンシャル・グループ
【連載】こたえてください森脇さん
⑫元本保証でない商品の販売を嫌がる職員への働きかけ
長野市vs松本市"不仲説"を乗り越え統合の八十二銀・長野銀が、「もう取引しない」と立腹の取引先と雪解けに至るまで
【みさき透】高市内閣で「運用立国」から「投資立国」へのシフトが加速へ
三井住友銀行の売れ筋でランクアップしたファンドは? ランクインした「ライフ・ジャーニー」は期待以上のリターン
ランキングをもっと見る
finasee Pro(フィナシープロ) | 法人契約プランのご案内
  • 著者・識者一覧
  • 本サイトについて
  • 個人情報の取扱いについて
  • 当社ウェブサイトのご利用にあたって
  • 運営会社
  • 個人情報保護方針
  • アクセスデータの取扱い
  • 特定商取引に関する法律に基づく表示
  • お問い合わせ
  • 資料請求
© 2025 finasee Pro
有料会員限定機能です
有料会員登録はこちら
会員登録がお済みの方ログイン
有料プランの詳細はこちら