2月下旬、5000人規模の事務職削減と配置転換の計画が報じられ、注目を集めているみずほFG。3月5日にはデジタル領域を主導している上ノ山氏が「FIN/SUM2026(金融庁など共催)」に登壇し、「金融の未来予想図」と題して講演しました。
上ノ山氏は自身の役職名について、現在のCDOからCDTO(チーフ・デジタル・トランスフォーメーション・オフィサー)に近く改称すると説明。「アクセントはT(トランスフォーメーション)にある。デジタルを活用することがやや目的化したようなところがあったと思うが、そうではなく、これを用いてそのトランスフォームをしていくことに力点を置いていく」と語りました。
講演の中で配置転換に直接触れることはなかったものの、「人間が持っている人間ならではの能力が、全てAIに置き換わるということでは当然ない」と上ノ山氏。「ただ人間のできないこと、人間の限界を超えていくことは既に可能になっている。それを前提に私たちの仕事や生活をどう変えるかを考える状況になってきている」と指摘し、「人間が処理することを前提にしたプロセス自体がパラダイムシフトしていく可能性が、かなり具体的に見えてきている」と説明しました。
現在のAIの活用状況については「実験的な段階から必ずしも抜け出していない」ものの、技術発展が‟指数関数的“に飛躍していく可能性を踏まえ、「バックキャスト的に物事を考えなくてはいけない」と強調。「今、何かを作り、それがしばらく後には無意味化する可能性があったとしても、手掛けていかなければいけないという難しい状況にある」と述べました。
変革に伴う「抵抗感」に言及
みずほは昨年、社内向けレポート「AIが変革する銀行の未来戦略」を策定。「今のオペレーションを守ることが社員にとって非常に大きなプライオリティになるが、モデルを変革して全く新しいものを作ろうとすると、抵抗感が出てくる」とした上で、「少し先の未来予想図を示し、今の私達のビジネスをどのように変えなければいけないか、1人1人が考えるきっかけになるようにと(レポートを)社内に示した」と話しました。
経営戦略の組み立て方については、「時間軸の先の方に行けば行くほど抽象度が上がり、手前になるほど現実的になる中で、私達は今を生きるしかなく、作用点は現時点でしかない」と強調。「金融の未来予想図といっても、それが当たるか当たらないかはハッキリ言うとどうでもよい。未来に何が起きるのかを想定しながら、私達は経営をやっていく必要があると思っている」と述べました。
規制緩和先行の風潮に警鐘も
そして、高度情報社会の到来を予測した「未来学者」として知られるアルビン・トフラーの言葉「未来はいつもすごく早く、間違った順番でやって来る」を引用。「間違った順番でというところがポイントだ」と念を押した上で、「私達は少し先、10年先はどうなるのかを考えながら経営をしているが、当然思った通りにはならない。ある日突然、別の技術が出てきて社会に浸透していくなど、こちらの思い通りにならないことを常に意識しなければいけない。作っては壊しながら進んでいく必要があるだろう」と説明しました。
金融ビジネスをめぐる規制環境については「緩和することだけが全てのようにも思われるが、そんなことはない。AIは毒にも薬にもなる部分がある。どういう形でお客さま、投資家を保護しながら、イノベーションや金融を前進させていくのかを、当局ともよくお話しながら進めていきたい」と述べました。
「FIN/SUM2026」で登壇した金融機関の代表・幹部らが、基本的にAIをいかに積極的に活用するかについて計画を語る中、上ノ山氏の一連の発言はグループとしてのAI推進の基本姿勢を示しつつも、未来の予測しがたさや変革に伴う摩擦や抵抗から目をそらさず、AI導入に対する自身の複雑な胸中をにじませる、異色の講演になったと言えそうです。
